もはや、その像の意味を誰も知らない

かつての都市は海面上昇の底に沈んで

腥い水に聳え立つビルディングの墓標、

その傾いた先端は、或る方向を指し示し

その線の交点にその像は立っていた

それが顔であるのか、生物であるのか

それは光を受け白く輝き、

あるいは光にも暗く黝ずんで見え

それが何で出来ているのか

それが何ゆえに立っているのか

知る者はもはや誰もいなかった


そしてその像はただ待っていた

来たるべき日を待ち続けていた

その日はいつか必ずやってくる

生き残った総ての人がそれを忘れた日に

来たるべき日は必ず訪れる

その日を像はただ待っている

その日、像の意味を人は知る

その像の名前を、誰も思い出す


だが、その時が訪れるその日まで

その像の名前を、誰も知らない

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