宣戦布告

戦争はどうせ始まってしまうのだから、

敗戦処理の創造を思い描こう。


物語はどうせ終わってしまうのだから、

語らいの終わらない夜を思い描こう。


日常はどうせ終わってしまうのだから、

非日常を夢想する日常を夢見よう。


正義はどうせ礼賛され続けるのだから、

正義から取り残された物語を語ろう。


現実はどうせ素晴らしく生きにくいのだから、

せめて素晴らしく思うための詩を書こう。


文学はどうせ孤児たちの腹を満たせないのだから、

せめて救われない少年たちの遠い目に応えよう。


世界は意志で止められないのだから、

せめて意志を持ち続ける意志を持とう。


生活はどうせ侵されてしまうのだから、

せめて侵されることのない心を持とう。



開戦前夜、

最後通牒に踊るその夜に、

夜はこんなにも静かだったと知る、





そして、

宣戦布告の言葉に告げよう。



言葉はどうせ人を殺すのだから、

世界の〈正しさ〉に宣戦布告しよう。

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