14:20
マーマンを追い払うと、残された死体から素材になる大きな
拳士が腕に傷を負っていたので、僕は彼の傷に手をあて、大気中の聖なる力を集めて流し込んだ。
自分の傷が癒えるようすを見ながら、フェニクアで働くようになって二年目の拳士が僕に笑顔を向けた。
「攻撃系の術だけでなく、回復系も使えるなんて凄いっすね。そのうえ、武器も使える。黒術士と白術士の中間だから、灰術士か。はじめて会いましたよ」
「どれも中途半端だけどね」
僕たちはそのまま、海岸で素材になる貝殻を集めはじめた。
「いま、灰術士の人ってどれくらい数がいるんですか」
「冒険者二千五百人の中で、ぼくだけらしい。五年前くらいにすごい冒険者の数が足りない時があったのよ」
「俺の入社前の話ですね」
「うん。その時に、個々の能力では劣っているけど、複数の能力を持つ者を冒険者にしようとしてさ、灰術士というジョブができたんだよ。何人かなったけど、僕以外はものにならなかったみたい」
「主任はどうして、大丈夫だったんですか」
大きい貝殻についている砂を払いながら拳士がたずねてきた。
「辞めたかったけどさ、上司が怖くてね」
「まあ、そんなもんですよね、だいたい」
「そう、そんなもんだよ。サラリーマンなんて」
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