13:40
ボルコル湖につくと、フェーたちは僕たちが降りたところで草を
湖は長く南北に伸びており、南岸から北の岸は見えなかった。
アイテムを回収する前に、まずは岸辺で日光浴をしているマーマンたちを追い払う必要があった。
マーマンは上半身が人間の男で下半身が魚のモンスターである。
目視できるだけで十数匹いたが、それ以外にも仲間が湖の中に隠れているかもしれなかった。
僕たちがマーマンに近づくと、戦闘の音楽が鳴り始めた。
この音楽が鳴っている間に全滅しても、精霊への事務手数料として所有しているアイテムの半分を失うだけで町の教会に戻れる。
死んでも労災にならないのは助かるが、代わりに高い保険料を精霊へ支払っている。
しかし、支払いを渋ったり、保険に入り忘れていたりして戦闘中に死ぬと、人間界に戻れなくなってしまうのだった。
パーティーのジョブは、三人の作業員が戦士、拳士、炎術士で、僕が灰術士だった。
戦士は武器、拳士は己の手足でモンスターと対峙する。
ただ、武器や拳でマーマンを攻撃しても、倒すことはできない。
どうするかというと、体内のマナを使う。
マーマンが
僕の刀はキラキラと光をまとっていたが、マナの放出をやめると、輝くのをやめた。
戦士と拳士も、僕と同じようにマナを斧や拳に込めてマーマンと闘っていた。
対して炎術士の作業員は、すこし離れた位置から僕たちへ当たらないように指から黒い熱線を出し、援護射撃をしてくれていた。
モンスターから受けたダメージは、アイテムや術で治るが、人間から受けた傷は人間界に戻り、医師の治療を受ける必要がある。
労災だけでなく、場合によっては業務上過失致死傷罪の案件になってしまう。
ちなみに、精霊がうるさいので労災隠しはご法度だ。
炎術士の放った黒い熱線の一条が、マーマンの胸を貫き、あたりに魚の焼ける匂いがした。
マーマンは火に弱いので、僕も炎術士のまねをして、熱線を撃つことにした。
ただし僕の熱線は赤色どまりのため、マーマンに当たっても貫通せず、水中へ押しやることしかできなかった。
戦士などの格闘系のジョブは体内のマナを使い、モンスターを攻撃する。
対して各種の術士は、大気中の火・水・土・風・聖の五元素を集約して、敵を攻撃したり、味方を補助したりする。
ちなみにジョブには基本ジョブと上級ジョブなどがある。
攻撃系の術使いの基本ジョブである黒術士が、たとえば火術の巧みさで会社から認められると、炎術士になることができる。
上級ジョブになると、いろいろとメリットがあるのだが、やはり何といっても職能給が上がるのが大きい。
クエストに同行した炎術士は、高卒の五十代だが、年収は超一流企業の課長クラスぐらいはあるだろう。
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