13:00

 町の入口にある飼育小屋で、自分の乗るフェーを探した。

 フェーは人間界のヒクイドリに似た鳥で、フェニクアでの主な交通手段であった。

 空は飛べないが、人を乗せて時速三十キロほどで走ることができる。

 僕はこの鳥の操作が苦手なので、なるべくおとなしい奴に乗りたいところであった。

 フェーに乗らなければならなくなった理由は、急にアイテム探しのパーティーに欠員が出たが、町長に来客の予定があり、代打で参加することになったからである。

 異世界に行こうとも、サラリーマンの世界が持ちつ持たれつであることは変わりない。


 フェニクアでは、狩りやアイテム探しは、四人一組で行く決まりになっていた。

 なぜ四人なのかというと、長い試行の末、この数に落ちついたとのことであった。

 たしかに、実際にクエストに出た身としても、妥当な人数だと思う。

 人数が多いと安心して攻撃魔法が使えない。

 誤って味方を攻撃して労災などになったら目も当てられない。


 僕は町の外までフェーを手綱で引っ張って行き、少し手間取りながらも、どうにか鳥に乗ることができた。

 その様子をフェーに乗っている三人の男たちが、不安そうに見てめていた。

 同行する作業員たちであった。

 僕が彼らにひとつうなずくと、北のボルコル湖を目指してクエストがはじまった。

 今日の目的は貝殻の採取とのことであった。


 フェーでの移動がはじまると、空からコミカルな音楽が流れはじめる。

 この音楽が聞こえている間は、モンスターが襲って来ず、安全に目的地まで辿り着くことができた。

 しかし、フェーから落ちてけがでもすれば、労災になりかねないので気は抜けない。

 労災が起これば、事後処理で一月ひとつきは土日が潰れてしまう。

 査定にも大いに響く。

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