手からビッ!
「あらかた手からビーム出してんじゃねーよ」
「うるせぇ。吹き飛ばされたいか今ここで」
別に俺だって好きで手からビーム出しているわけじゃない。なんで出るかもわかんねえから困っている。
そう、俺は気がついた時すでに遅し、両手からビームが出るようになっていた。原因は多分漫画の読みすぎじゃないかなと思っている。一応、自分の意思でビームを出したり威力調整できるが、感情が高ぶった時はその限りではない。片手でも両手でも撃てる。撃てる回数は試したことはないが、撃った後に疲労感もなにもないし、飽きるまで撃てるんじゃなかろうか。
「そんな風にあらかたはその力を普段からビービー使ってんのか?」
「そうそう使わねえよ。変な組織に捕まって解剖されたくないからな。今みたく威力絞って害虫殺すくらいだよ」
「はぁん?」
まあ、一日3ビームくらいだ。威力調整が最近できるようになったから比較的撃つ回数が増えてきてはいるが、悪用する気はない。護身用に鍛錬しているだけだ。後は、てかメインは虫嫌いの俺にはありがたい携帯殺虫剤代わりか。殺虫剤と違って跡形も残らないのが最高にいかすぜ。後片付けしなくて済むからな。ただ、調整をミスると机や壁もくり貫いちまうこともある。が、そこはご愛嬌というやつだな。
「その
「ない。厚さ5センチのコンクリの壁を貫通できるからできるんだろうけれどな」
「オレにいつも撃ってきてんのは手抜いててくれてたのかよ。はは。それでも10メートルも吹き飛ばされてたら世話ねーぜ。笑い死ねるな」
…………。
「本気で撃ち込んでやってもいいんだぜ。そんときゃ余裕で死ねるだろうよ。お前がコンクリより固くなけりゃな」
「おいおいおい、あらかた君、随分吹いてくれてるけれどよ、ほんとは人に本気で撃てねえんだろ?」
そりゃ取り返しのつかないことになりかねんから撃てねえさ。撃たんわ。ただ、こいつ前々から気に食わねえから、なめられんようにもう少しきつくいくか。
「なめんな。てめえならいつでも消し飛ばせす覚悟は出来てるぜ。遺書の用意したらLINEよこせや」
地味に噛んだ。
「はっ、ほざけよ」
なぜ人間兵器である俺にこいつはここまで軽口を叩けるのだろうか。へこへこしろとまでは言わんが、いかんせん、挑発的過ぎる。
「まさかお前、わざと俺に撃たせようとしていないか?」
「……バレちまったか。時間掛け過ぎだったか。でもそのおかげでとっておきは用意できたぜ。奥の手だ!」
おもむろにどこからかビンを取り出した。中で黒いものが蠢いていた。蠢いていた!!!!!
蟲が蟲が蟲が蟲が蟲が蟲が蟲が蟲が蟲が蟲が蟲が蟲が蟲が蟲が蟲が蟲が!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
ビッ!
「うげっ」
俺はビームを撃っていた。あいつがそのビンの蓋を開けて、こっちに投げてきたからだ。ビームはビンを中身ごと消し飛ばし、射線上にいたやつのどてっぱらをいとも容易く貫いた。
ばたり、やつは倒れた。急いで駆け寄る。
「大丈夫か?! な、なんでこんなこと……。それより救急車か」
携帯を取り出すと、その手をがしりと掴まれる。
「うぐぉぉ……やめろ、直に処理班が来る。お前は……余計なことをすんな。あほが……」
「っっっ!! わかんねえよこんなことに何の意味がある!!」
掴まれた手が徐々に弱まり、顔が蒼白になっていく。俺は泣きそうになっていた。
「意味、ね。これでオレの家族は助かんだよ。お前には面倒なことさせちまったが、悪く思うなよ。オレは思わねぇ……あ、あと、早くここからずらがった方がいい……」
「俺、お前のこと嫌いだったけどよ、嫌われるようにお前が演技してただけだったなら、友達になれるかもしれなかったのにって、なあ?!」
頭の中はぐちゃぐちゃだった。そんな俺の腑抜けた面が琴線に触れたのか、振り絞るようにこいつは叫んだ。
「はああああ?! オレが演技してたああ?! 本気だったわ! じめじめとした陰湿なお前が気に食わない! 飄々とした強がりが気に食わない! 虫なんかみみっちいやつに過剰に反応するお前が気に食わない! 気に食わない! 気に食わない! 気に食わない! 全部否定してやりたかったぜ。友達とかへどがでるぜ、全く。……だから早く失せろ……」
俺は立ち去った。これ以上やつに叫ばせてもいたずらに体力を奪うだけだ。血は、出ていなかった。ビームで焼けて止血になっていたせいか。
頼む、生きていてくれ。俺はこのつまらないことを仕組んだやつをぶちのめしにいく。そんなに俺に人を撃たせたかったのなら、いいぜ、てめえを的にしてやんよ
。
俺は歩く。ビームのようにまっすぐに、通った後を殺意で焦がしながら。
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未来からの二、三言。超能力ものでハードボイルドに書きたかった。ハードボイルドというか、ただのヤンキーだし、状況描写がないからこれどこでやっているの状態。さらに続きなし。
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