HEBE‐RE型KE式改々空間戦用フル装甲……

 実際的な暴力の前では、大抵のことは無に帰る。例えるならそう、イーストウッドだ腕白ボーイ。


「へべれけ酒太郎、いっきまーす」


 どこにだ。あなたは少々大人しくしていて欲しい。


「おひゃー。この感覚、この感じ、この流れ、いけるぞっ! いけるー!」


 いいや。もうどっかいけ。その方がこっちは楽だ。

 と、なんか思うとるうちに、突如、巨大なブリキのおもちゃのようなロボットが岸壁から現れた。へべれけをその視界に捉えると、口から怪しい光を出す。光を当てられたへべれけがキャトルミューティレーションされるように吸い込まれていく。へべれけを飲み込んだロボはきらんとその瞳を輝かせた。


「ほおおおおお、快感! これはそそりたつうう」


 へべれけはロボットに搭乗したのだろうか。ロボのスピーカーからへべれけの声が聞こえてくる。それはそうと、憧れだったにしてもロボットに乗っただけでおっさんがよがるな、気持ち悪い。


「滾る! 滾るぞ、熱い血潮が! 新たなパワーが我に満ちる!」


 どうやらロボ内部でロボを操作しているらしい。突然ロボが不規則に手足を動かし始めた。ここはいいけれど、すぐそこ街だからやめて欲しいなあ。あとロボの力をまるで自分の力だと錯覚しているんじゃなかろうか。

 と、ここでまた一変。ソフビ人形を大きくしたみたいな怪獣が空から降ってきた。なんでもありか。都合よく敵がいるんだなあ。


「う、うわあ……逃げなくちゃ逃げなくちゃ逃げなくちゃ逃げなくちゃ……」


 そういうのいいからさっさと倒せよ。というかなんでさっきからコックピットの音声垂れ流しなんだ。会話しながら戦うつもりか。舌噛むぞ。

 おっと、怪獣がロボに威嚇して吠え出した。交戦する気満々のようだ。まだ何も悪さしてないけれど、あんな怪獣早く腹くくってやっちまえへべれけ。


「くっ、俺が引いたら街の皆が……来いやこのやろー! なにか……武器はないのか……?」


 武器なさそうだなそのロボ。でかいブリキのおもちゃだし。まあ向こうもでかいソフビ人形だからどっこいどっこいか。

 ビーという轟音。うおっ、違う。向こうはビームを吐いてきた。無論、ビームは外されることなくロボに直撃。


「おいちょっとおおおお?! 揺らすなよ、体中あちこち打ったじゃねーか。こんちくしょう、いてー、ここ腫れてんだけどー?!」


 どこだよ。かといってモニター出されても困るけれど。

 思ったより元気そうでなによりだ。ビームが弱いのかロボが固いのか、わからんが、どうでもいいし議論もすることじゃない。

 へべれけロボは反撃に出るようだ。怪獣との距離を詰め、接近戦に持ち込むようだ。そりゃそうか。


「見える! 見えるぞ勝利へのヴィクトリーロード! 幻じゃないっ!」


 新種の素質はありそうだが、どこの馬の骨とも知れん開発のロボは持て余すらしい。勝利の道とやらが余程整備されていないのならあれだが、恐ろしくよろよろと歩いている。千鳥足。まさにへべれけロボか。しかし、なんだ? 怪獣は距離を詰められることを嫌ってか、ずるずると後ずさっている。さっきのビームをものともしていないことでうろたえているのか、歩き方が不気味でびびっているのか。ビーム連射していれば勝てると思うが、これも流れという大きな力のせいか。


「射程内に捉えたぜ。うらうらうらうら!」


 そんなこんなでへべれけロボは怪獣をぼこぼこに殴り始めた。怪獣はされるがままだった。なぜ無抵抗なんだ。


「どうしたよー、にーちゃん。さっきの威勢はどこだぁ?」


 すっかり悪役だな。怪獣はたこ殴りにされ終わると、びたんと土煙撒き散らし倒れた。なんだこれ。胸躍るはずの巨大ロボと怪獣のバトルのはずが、戦い栄えも絵面もあれだとこうも見ててつまらんものになってしまうのか。


「我らが勝利ー! やったーやったー、ジークナオン!」


 へべれけが勝利に酔いしれる中悪いが、怪獣はまだ生きているように見える。立ち上がる様子がないことを見るに、あいつは悟ったのだろう。そう、へべれけの寿命は盛ってあと2日。もし戦いを続け、へべれけが負けでもしてみろ。彼の人生に泥がつく。普通はそっとしておいてあげるべきなんだ。

 ……負かされてもいいか。どうでもいいし。






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 未来からの二、三言。ロボットパルタくらいしかまともに見たことないのに、ロボットもののパロを入れようと頑張ったりアンチテーゼを唱えようとした結果。

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