閑話休題:万年筆事始

 みなさんが万年筆に興味を持ち始めたきっかけは、何でしょうか。

 僕の両親が学生の頃には、高校の進学祝いとしてボールペンと万年筆のセットを贈る慣習があったそうです。

 僕が高校生になった頃には、もう万年筆は高校生が持つものではありませんでした。学生が万年筆を使わなくなったことから、大人の趣味としての側面が強化されていったのでしょう。「社会人が趣味や装いの一環として持つ高級品」というイメージがありました。

 特に、僕にとっては「文豪とかめっちゃ偉い作家先生とかが持ってて、おしゃれなカフェで原稿を書くときに使う高価なペン」でもありました。

 はい、そうです。その幻想を元に「なんか文豪っぽくてかっこいいから」という理由で我が家に来たのがウォタ子さんです。

 そんな理由で、触れるもの全てを壊す手を持っているというのに、万年筆を買ってしまったのが僕でした。

 「気をつけて扱えば大丈夫」——そう思っていた時期が僕にもありました。


 はてさて。僕が万年筆ユーザーになった理由はそんなものなのですが、実際のところ、みなさんはどんな経緯で万年筆に出会ったのでしょうか。

 誰かに贈られたのかもしれない。

 誰かへの贈り物を探していたのかもしれない。

 必要に迫られて買ったのかもしれない。

 たまたま店先で一目惚れしてしまったのかもしれない。

 きっかけは「なんとなくかっこよかったから」とかでいいんだと思います。

 出会ったペンと時を重ねて、なんとなくのきっかけが、いつの日か大事な思い出になる。

 万年筆は、そういう付き合い方ができる日用品なんですね。


 いいですねー。万年筆との運命の出会い。できるなら、他の人の馴れ初め話をたくさん聞かせていただきたいところです。

 同士さえいれば。同士さえいれば。


 そういえば思い出したのですが、僕が初めて握った万年筆はキティちゃんの鉄ペンでした。

 まだ僕が十歳にも満たなかったころ、デパートの福引で当ててきたやつです。

 当時すでに「万年筆=なんかかっこいいもの」という図式で考えていた僕は、ずいぶん嬉しくて、自由帳にたくさん落書きしたものでした。

 ……彼の享年は六ヶ月でしたね。

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