第9話 家庭できる簡単な永久機関

「頼んだぞ、コバヤシマル」

 親指をグッと突き立てるサトシ。

「姉貴は算数と社会を頼んだ」

「どさくさに頼まないで!!」

「頼む…毎年、家族一丸となって取り組んだじゃないか、今年で最後なんだよ、来年は中学生なんだよ俺、もう手伝えないかもしれないんだぜ、ラストサマーだぜ」


 よくわからない説得で、無言の分業に勤しんだ。

「永久機関って…ずっと動くんだよ…そんなエネルギーあるの?」

「大袈裟に考えるなよコバヤシマル、気楽に工作してくれればいいからさ、なっ」

「アンタ、気軽に選んだ割には壮大なテーマよコレ」

「響きがカッコいいだろ、ヘヘッ」

「ヘヘッじゃないわよ!! これだから知能指数の低いガキは…テーマ変更よ、昆虫採集にチェンジ」

「無理ね…契約は交わされたのよ、永久機関をサトシに差し出さない限り帰れません」

(ムカつく…このゴスロリな姉、無計画な弟、迷惑だわ…厄年?厄年だったかしら)


「頼んだぜ、手を動かしてくれよ」

「クソガキがー!!」

 ペットボトルのミネラルウォーターを投げつけた。

 悲しいかな…もふもふの手では掴むことも叶わず…ペットボトルは机の上でクワンクワンと揺れただけ。

「あー!! ストレスー!!………ん?……んん…出来たかも…」

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