第4話
「権利能力平等……素晴らしい……!」
ある時、タンブリンマンの話をそのまま持ち帰って聞かせただけなのだが、ディナは目を輝かせていた。
権利というのも色々あるようだが、タンブリンマンの世界ではあまりにもひどい扱いを受けないことであるようだ。そしてある程度の自由は保障され、むやみにそれを侵害してはならないということだろう。
それらを身分や性別に関わらず全ての人が行使できるというものらしい。身分制度によってふんぞり返っている連中には否が応でも阻止したいものだろうな。ディナは燃えているようだが。
「私的自治……!? 何ですかこれは!?」
タンブリンマンの世界で言う『契約』について語っているようだ。誰とどのような契約を結ぶかは当事者同士で決めていい。他の者は極力口を出すな。そして、当事者同士で責任を負え、ということだろう。
色んな場所に首を突っ込んで儲けている奴等には、邪魔でしかないだろうな。
「過失責任……これはいったい……?」
タンブリンマンの世界では、他人に何らかの損害を与えてしまっても、『わざとでない』とか『やむを得ない事情だった』という場合には責任を免れることが出来るらしい。当然これは誰かに判断してもらう事もあるだろう。なんでもかんでも文句を付けられてはたまらない。その点は社会がある程度の縛りを持って自由とするのがいいということ、かもしれないな。
「しょ、所有権絶対……!? そうか……これがあれば……」
要するに誰かが持っている物を強引に取り上げてはいけないということだ。当たり前だが。確かにこの点は『当たり前』で済ませてしまっていたかもしれない。多少は考えてみる事も必要なのだろう。
ディナはいくつかの制限すべきことも学んだようだ。公共の福祉を大事にして、信用を裏切ること無く生活を営み、無茶な言動は慎めということを再認識したようだ。
正直言って私はただ聞いているだけだった。彼女には頭が下がる。騎士の任務は抜かりなくこなさなくては。
「リシア。私も『赤い家』に行って、タンブリンマンさんに会いたい。まだダメなの?」
会わせられるわけがないだろう。だって……
とにかく、私一人でだ。報酬もしっかり管理せねばならないのだから。
タンブリンマンに持っていく報酬とは、この世界に存在する『魔眼』や『幻視』に関する話の数々だ。これは、私がしっかり管理している。
ある日、私はタンブリンマンとの話を終え、帰路についていた。その時だ。何かを感じた。私はその感覚を保ちながら歩きつづけ、闇に覆われた虚空を打ち据えた。
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