第2話
危機を脱して以降、私は騎士の仕事の傍ら、この場所に足しげく通うよになってしまった。何故かここは気分が落ち着く。何度か足を運ぶことでこの土地の『暗黙の了解』のようなものを知ることが出来た。ここは秘密の場所であるとともに、中立地帯でもあったのだ。それゆえの対応も徐々に知ることが出来た。
タンブリンマンが語ったカンパニーというものに、私は惹かれるものがあった。それを語る彼の目にも力があった。その時の私は、『仮に力を得たとしてもむやみやたらと行使してはならない』という想いが呼び起こされていた。どこかで彼と通じるところがあるのだろう。
お互いに事情を把握しつつの交流だった。わかったことは、タンブリンマンが『赤い家』に現れることが出来る時間には制限があるという事だ。一日の内、二時間ほどのようだ。そしてこれは時と場合によって変動する。把握は追いつかない。これを考慮しつつ彼と話しているのだ。
さて、カンパニーとは『会社組織』というものらしい。彼の世界において、この会社組織が出来たのは相当昔らしい。その当時の貿易や航海を伴う商売などを行う者達が自ら版図を広げ利益を得るための組織ということだ。
有名なものが『イギリス東インド会社』で、その世界のイギリスという国にあった会社を総称してそう呼んでいるそうだ。その『イギリス東インド会社』というものは『銀行』というものから資金を借り受け、そのほかにも出資者から資金を募り、事業を営んで得た利益を出資者に配当として支払う。そして『銀行』から借りたお金を利子をのせて返す、というものだ。
中々理解が及ばなかったが、聞いてみると面白かった。自室で思索にふけるのも面白くなってくる。とりあえず、その『銀行』というものも教えてもらった。彼は『自分の知識も信用に足るほどではない』と念を押していた。ただ、私は信用してみる。彼は何かをやってみることを大切にしている。そう感じたからだ。
『銀行』というのは市民からお金を集め、それを会社組織などに貸して事業を営む助けにする。つまり市民は銀行にお金を貸し、銀行は会社にお金を貸す。銀行は会社から利子を受け取り、市民は銀行から利子を受け取る。このようにして巨額の資金を集めることが出来るという話だ。最も銀行は各地に支店を出しているので、その支店から市民がお金を引き出すことが出来るそうで、その利便性も一つの機能のようだ。なるほどな。
現在、わが国には『銀行』にあたるものは存在しない。商社などを見て回ると、独自の運送方法や送金の手段を持っている所は多い。違いは明確ではないが、我が国の商社と彼が言うところの会社の違いは『株式』を持つか否かではないだろうか。
彼の世界で最初に出来た株式会社は『オランダ東インド会社』というらしい。『イギリス東インド会社』というのは、一度の事業にあたり、その都度出資を募っていたようである。『オランダ東インド会社』は、それを長期的な資本にするための仕組みを模索したようだ。出資者には出資額に応じて『株式』というものが渡され、その『株式』に対して『会社』が得た利益を配当として支払う。この『オランダ~』『イギリス~』などの会社の事業と言うのは植民地支配や侵略、略奪行為、戦争への加担などが含まれている、と。なるほど。
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