第2作「クーピー・デューティー・ララバイズ」

 烈風吹き荒ぶ大地に蠢く影の大群。

 砂塵くもの切れ間から垣間見えるのは地上に瞬く様々な色のひとの数々。


 遺伝子に表れるのは、その者の役割しゅくめいを示す3色。


 赤、青、黄。


 彼らの腕章に描かれているクーピー・ペンシルの色はそれぞれの役割を示している。


 例えば。

 

 今誰よりも先頭で歩き、彼ら大群を率いている者の一人、赤いクーピー・ペンシルが描かれた腕章の彼は「希望」。

 その腕章が与えられた彼らは何があろうと、何者よりも先行し、先を見据え、続く者達が行進する道を示してやらねばならない。

 


 例えば。

 

 今誰よりも慎重に歩き、彼ら大群の中枢にて地を踏み均している者の一人、青いクーピー・ペンシルが描かれた腕章の彼は「冷静」。

 その腕章が与えられた彼らは何があろうと、何者よりも観察し、今を理解し、続く者達が成すべきことを諭してやらねばならない。


 例えば。


 今誰よりも一心に歩き、彼ら大群の大半を占める者の一人、黄色いクーピー・ペンシルが描かれた腕章の彼は「遵従」。

 その腕章が与えられた彼らは何があろうと、何者よりも盲信し、後に後悔し、続く者達が再び現れるよう祈ってやらねばならない。


 大群はひたすらに歩き続ける。


 遠い、冷え切った暗い宇宙ソラに浮かぶ星を目指して。


 大群はひたすらに歌い続ける。


 広い、煮え滾る砂漠を切り裂くようながなり声を上げて。


 大群はひたすらに抗い続ける。


 惨い、およそ変えようのない自分達を縛り上げる義務に対して。


「それぞれが夢見ても、理解しても、信じても、辿り着くのは難しい。そもそも、分かたれてしまっては私たちは何も出来ないのかもしれない。」


 それでも、ひたすらにあの星の放ついろがほしい。


 そうしなければ、そうしなければ―――――


「何故それを望んでいるのか分からないから」


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