終章 浅き夢見じ 酔いもせず xx
そうして、あの日から、いつの間にか半年は経っていた。
あの夏は二度と忘れないだろう、絶対。
二度と元には戻れない化け物になった夏。アヤカシたちをなぎ倒した夏。…大切な幼なじみを亡くした夏。
「ミーナ、帰るか」
「うん、帰ろー」
アヤカシの総隊長、「紅の大鬼」が倒されたのはもう半年前なんて、信じられない。
それでもアヤカシたちの遺した「夢幻の歪み」は、余りにも多かった。大鬼を倒したばかりの今はまだ、黒い霧は出ない。
だから、今は歪みの修復のために走り回っている。
…彼女のペンダントを使って。
カレンが最期に遺したこのペンダントは、歪みの目の前でかざせば修復する効果があった。
そのペンダントのお陰で、歪みはもう既にあと一個になっていた。
『みんなが… 私を… 忘れないで…いてくれるなら… きっと… 戻って…くる…から……!』
カレンが遺した言葉は、未だに心に残っている。カレンのことを忘れちゃいけない気がして、忘れたくても忘れられない、一種の呪いのようでもある。
いつか、ふとした時にカレンが本当に戻ってきそうな気がして。それとも、アヤカシに囚われたことでカレンが死ぬ理由をつくってしまった俺の枷か。
いずれにしても、俺は忘れられないんだ。
帰り道、ミーナと二人で帰る道。
「…今日で、一番最後だね」
「…ああ」
「…カレン、戻ってきてくれるかな」
「…戻ってくる、俺はそう信じてる…!」
ミーナは忘れていなかった。きっとみんなもそうだ。そうなはずだ。
家の前に、人影が見える。長身の影だ。
見たことはない人なはずなのに、何故か懐かしい感覚に襲われる。
まさか、いや、もしかして。
「…また、会えたね。ミノル、ミーナ」
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