第3話

クラスメイト全員のステータスの確認が終わった後、王女はひとりひとりに部屋を設けた。更に専属のメイドとこれから鍛えさせてもらえる騎士の方付きということ。


「ふ、不束者ですがよろしくお願いします!」


俺に付いてくれたメイドさんは新人のローレルさん。新人と言ってもこの城に使える身。問題ないと思い俺も短い間かもしれないがよろしくという意味も込めて挨拶をする。

何故か輝かしい目で見られてしまったが。


その後ローレルさんの案内により、城の中の豪勢な部屋に入り、今日は食事の時間まで待ってくれと言われたので俺は状況を一旦整理するためブレザーを壁にかけ、大人しく部屋に篭った。


「何かあれば何でもお申し付けくださいね…私は信じていますから」


ん?今何でもって言ったよね?

それは置いといてローレルさんは意味深な言葉を残し部屋を出ていった。


「さて、これからどうするべきか」


ローレルさんから今日の時間を聞いたところ俺がこの世界から去ってから一世紀以上経っているということ。そしてそれくらいの年月が経っているにも関わらずこの世界は少しも平和にはならない。むしろかなり悪化している。

これは何とかしなければ。

しかし、考えるべき事はこれからの事だ。俺はあのクラスの中で嫌われていた。そんな嫌われ者が勇者を持たず、低いステータスとわかったら?俺をこれからのどこかで襲ってくるのは間違いないだろう。無論その程度では傷すらつかないので問題は無いが。


それにあの王女は俺を嫌悪している。無理矢理呼んどいて使い物にならなければ捨てるかんじだな。俺がこの場に長居すれば王女も何かしてくる。俺もここから早く出たいので面倒になる前にやられる振りでもしておくか。だが…


(一番問題なのは将生だな)


俺のあっちの世界で唯一の友人の将生をどうするかだ。もし俺の予想している事が起きれば将生は間違なく自分を庇うだろう。それで将生の立場が悪くなるのは俺としても心が痛む。だが俺と一緒に来て俺と同じ道を歩むのは避けたい。


(…とりあえず少しずつ考えていこうか)


俺は話し相手が欲しくなってしまったので久しぶりの戦友を呼んだ。


「超次元召喚魔法。来い、ディアス」


俺がその名前を言うと床から紫色の魔法陣が生まれ、そこから漆黒の鎧と同じ色のフルフェイスの兜を被った騎士が現れる。


「…久しぶりだな、こうして姿を見せるのは一世紀ぶりか?」


「いえ、あの時の戦い以来ではないでしょうか。ブラウ様もこのようなお若い姿になって」


「これは転移してからこの姿になったのだ。恐らく本来の力を出さない限りこの姿だろうな」


「これならお若い女性の心も射止めるのではないしでしょうか?前は本当に悪魔みたいな姿でしたから」


「…殴るぞ?」


俺と俺の右腕であるディアスは笑いながら話をする。こんな風に話せるのも将生以来だな。


「…ブラウ様はこれからどうするのですか?」


「とりあえず、ここを出てから考える。何処に行くのかは分からないが目標はある」


「ブラウ様が望んだ平和な世界を作る…ですか?」


流石、俺の考えがわかっている。


「ああ、だけどそれは少し違う。俺はあの時、俺がいなくなることで平和になると思っていた。だが俺がいなくなった途端世界は更なる争いに包まれたと聞いた。だからこんな世界は救いようがない」


「となると?」


「…この世界を変えてみたい。そのためにお前の力が必要だ。もう一度俺と共に来てくれるか?」


俺は真剣な眼差しでディアスを見つめる。


「当たり前じゃないですか、この力はあなたの夢のために生まれたもの、あなたの夢を見届けるためなら存分に奮わせて頂きます」


「…ありがとう」


「ホウジョウ様、食事の御用意ができましたので食堂にご案内させていただきます」


俺がディアスに礼を言ってすぐに扉がノックされローレルさんの声が聞こえた。俺はディアスを魔法陣に戻し、扉を開ける。


「わかりました。案内よろしくお願いします」


「はい…あの、今のは一体?」


「?何のことですか?」


ローレルさんは俺に対して疑問を浮かべていた。まさかディアスの存在に気づいていた?だけど扉を開ける前にディアスを戻したので姿は見られていないはず。

俺はローレルさんの疑問を考えながらも一緒に食堂に向かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

帰ってきた魔神はもう一度頑張る Lドラド @laplace765

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ