第1話
「…行ってきます」
家の玄関の扉を開け、今日も学校へと向かう。これが1日の作業のようになってしまい、行きたくないと思っても身体が動いてしまう。
まあ、行きたくない理由があるといえばあるのだが。
しばらくすると通学路も歩き終わり、俺は学校の教室の扉を開ける。
「…!来た」
すると周りがざわめき、クラスメイトからの変な視線を浴びる。俺はそれを気にせず席に向かう。それと同時にクラスメイトは俺から離れはじめる。
「おっす。相変わらず周りから避けられてるな悠は」
「…将生か。おはよう」
俺はクラスで唯一と言ってもいい男友達の高橋将生に挨拶をする。俺の事を信頼してくれるやつはこいつくらいしかいないしな。
「…お前、昨日もやったんだろ?他のクラスの女の子助けるために絡んでた先輩達を半殺しにしたって。あれでまた噂が広がったぞ」
「あれはたまたま俺が通りかかっただけだ。それに噂なんて気にするものじゃないさ」
噂、それが俺が嫌われる理由だ。俺としても人を助けているつもりなのだがどうも力加減がわからずやりすぎてしまう。そのためあっち側が学校に報告し、俺を悪く言う。そのため俺はクラス内で誰彼構わず暴力を振るう。不良などと言われ、避けられているのだ。
「まあな、こーんな真面目そうな生徒が不良とか笑っちまうよ」
俺の容姿は黒髪に蒼い瞳、特に眼鏡などはかけていない。将生が言うには真面目な容姿だというのだ。正直基準が分からない。
「悠くん!お、おはよう!」
そんな俺に話しかけてきたのは栗色の長髪に出る所は出ているクラスのアイドルとか言われてる麻木瑠璃華だった。
「麻木か、おはよう」
俺が彼女に挨拶をすると彼女は顔を見開き、「あ、挨拶してくれた」とか何とかぶつぶつ呟き、赤くしていた。将生は「あ〜やっちまったな」とか言ってるが。
そして将生以外の男子生徒達は俺を睨む。俺がそっちの方を見るとすぐにそっぽを向いた。
「みんな、おはよう!」
そしてクラスメイトが全員教室に入った後、担任の新人教師の山田涼子先生が来た。まだ席につく時間でもないのに早いものだ。
「あ、あの悠くん、今日は放課後暇かな?」
「特に何も無いな」
「じゃ、じゃあ放課後…!」
麻木がその先を言おうとした瞬間床から光が放たれる。
「!?」
「なんだよこれ!」
…これは、魔法陣…。しかも俺が知っている奴だ…!
そして教室は光に飲み込まれた。
光が晴れたあと俺達は教室とは全く別の場所にいた。長い絨毯が敷かれ、白い石造りの床。その先にはまさしく王や姫が座るであろう玉座があり、可憐なドレスを身につけた女性がいた。
「どこだよ!?ここ!?」
クラスメイトはいきなりこのような場所に置かれた事で動揺していた。
「なあ、悠。ここ、どこなんだろうな」
将生は冷静を保ったまま俺に聞いてきた。流石は将生、クラスを裏で支えているだけあって心強いな。
「さあ、どこだろうな」
将生には悪いが俺はここが何処なのか知っている。そして俺は心の中で思う。
(…また来てしまったんだな。この世界に…)
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