テスト日の朝

いよいよテスト初日になると弓道場では弓を引く音ではなく、かわりに話し声や教科書をめくる音が聞こえてくる。弓道場の中では安川が自分で材料を買い揃え、自分で作った机で勉強し、分からなければその横でスマホをいじっている国清に質問をしていた。


「ねーねー、国清。これどうやるん?」

「ん?ああ、これはここがこうなってこうしたら…。」

「はーはー、なるほどね。ありがとう。」


弓道場でのんびりと勉強してすごしていると平沼と篠塚が来た。


「あれ、まじめに勉強しよるやん。」

「ん?あ、平沼か。まあさすがにテスト日は弓道より勉強せんとまずいけえね。」


平沼は安川が弓道場に来て弓道をしないことに驚いたが、最近は裏で弓道バカと呼ばれる安川もテストの日の朝は真面目に勉強する。平沼と一緒についた篠塚はカバンからスマホを取り出してゲームをし始める。


「篠塚、お前もか。」

「ん?なにが?」

「いや、勉強せんのんかな~と思って。」

「え、勉強する必要なくない?それよりテスト前に詰め込んでも意味ないやろ。」

「いや、そうかもしれんけどさ…。なんかやらんとやばそうやん…。」


安川がそう反論するがだんだんと声が小さくなっていく。実際、テスト週間に勉強をあまりせずに弓道ばかりやっていたので強く反論できないのだ。そのことに少しもやもやとしつつも勉強をしていると、分からないところがたまにあるのでそこを国清にまた教えてもらう。国清の説明を聞いているといつの間にか平沼がそれに混じりはじめた。


「これはなんでこうなったん?」

「これはこれがこうなるから…。」

「あー、分かった分かった。」

「いや、平沼。俺がわかってないけえさあ、途中で止めんで。」


勉強会をしているとやがて学校がもうすぐ始まる時間になった。それに気づいた篠塚は安川達にそのことを教えてみんなで教室に行った。


その日のテストが終わった後、またみんなが弓道場に集まる。そこでまたその日のテストの分からないところを安川が国清に聞き、それに国清が答えていた。テストが終わるまでこの光景は続いたという。







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る