秋編

的張り

夏休みが終わりに近づいた頃、練習で使っていた的はボロボロになっていた。


「今日の午後は審査を受けん2年生は的張りを、1年生と審査を受ける2年生は審査練習するぞ。」


午後の練習の前に山中先生がそう言った。審査とはそのまんま弓道の審査で、初めの審査でに級をもらい、1級か2級を取れば次の審査で段を取ることが出来る。的張りとは的を直すことである。


「とりあえず今使ってない的の的紙を全部はがそうで。」

「手があいとるやつは木枠洗って来て。」


弓道の的は木でできた枠(木枠)と紙に的が印刷されたもの(的紙)でできている。的紙をはがして変えると再びきれいな的が使えるのだ。的紙をベリベリとはがし、水とたわしで洗っていく。的紙をはがし終えると、使われていなかった木枠で的張りをする。


「的に砂がむっちゃつい取るやん!ほんまに洗ったん?」

「隣のサッカー部の砂ぼこりのせいやろ。」

「もう1回洗い直す?」

「汚いやつは洗い直いて大丈夫なやつは的張りしようや。」


だめな物はもう1度洗い直し、残りのきれいな物で的を張る。


―――――――的張りの方法―――――――


1、的紙を丸く切る

2、適当な大きさの切れ目を横に1~2㎝れ 

 る

3、的紙と木枠を的紙の切れ目ごとにセロハ

 ンテープで固定する。

4、木枠をガムテープで1周し、セロハンテ

 ープを固定する。


――――――――――――――――――――

的張りをしていると的紙の切れ目が小さい物がいくつかあった。


「これ切れ目小さくてやりにくいんやけど。」

「多分1年生じゃろ。この前1年生にやらしたし。」

「これ切れ目はちょうどいいけど真ん中に小さい穴があいとる。」

「それはおっとーのやな。あいつ自分が切れ目入れたやつに竹串で真ん中に穴開けるけえね。」


忘れている人もいるかもしれないが、おっとーとは音丸のことである。ちなみに音丸が切り込みを入れた物は切り込みが横、縦共にちょうどいい大きさなので、おっとーブランドと呼ばれている。


「やべ、叩いたらベコベコ鳴るんやけど。」

「俺も。」

「よっしゃ!上手くいった。」


的張りは時間がかかる作業だが、すぐにレギュラーによって穴だらけになる。なので的張りはいつもレギュラーが自主練習でやることが多い。また1か月後には的張りしないといけない的が量産されているだろう。

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