恋愛 1

 忘れている人もいるかと思うが、ここは工業高校である。男女比が9対1と女子に対して男子がとても多いので、この工業高校では女子は男子が選び放題と言われている。事実、それは間違えではない。だいたいの男子が女子に飢えていて、女子が普通より可愛く見える工業病という言葉があるほどだ。なのでほとんどの女子には彼氏がいる。


部活が終わった後、1つのカップルが弓道場でイチャイチャしていた。原とサッカー部の3年生だ。お互いに抱きつきあい、たまに見つめ合い笑っていた。


ギューッ

チラッ

「えへへ。」


そこには甘い空気が漂っていた。今弓道場にいるのはカップルと北村、森崎、篠原、平沼、音丸である。北村は弦を直し、その他のカップル以外の人はカードゲームをしていた。カップルは人目がある中イチャイチャし続けている。


チラッ

「イヒヒ。」

「ふふふ。」

ギューッ

チラッ


それをずっと繰り返していると心なしか北村の作業の音の大きさが段々と大きくなっている気がした。


「あ、もうこんな時間。帰ろ。」

「じゃあうちも帰ろ。」


そう言ってカップルが去ると北村がついに壊れた。


「僕、アンパンマン!」

「うわーーー!北村が壊れたーー!」

「北村ーーー!」

「それよりこれ片付けようや。」

「僕、アンパンマン!」

「北村ー!正気に戻って-!」

「てゆうか何で地味に似とるん!?」

「僕、アンパンマン!」

「俺帰らんといけんけえ早く片付けようや。」


場はカオスとなった。結局、北村が元に戻ったのは10分後だった。



後日、北村は安川に声まねを披露した。


「僕、アンパンマン!…ちょっと似てね?」

「いや、全然。」


全く考える素振りを見せずに即答された。そのことに少しショックを受けた北村だった。

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