弓道ティーシャツ
朝の礼の前に安川が紙を持ち言った。
「この弓道部オリジナルの弓道ティーシャツを作ろうと思います。今、この紙に印刷されているデザインは私が家でデザインした物で、まだ試作段階なのでアイデアも募集中です。値段は1枚1780円と少し高いのですが通気性が良く、この弓道部で写真を撮る時などにおそろいの服を着ているもより思い出に残ると思います。購入するときは私にサイズと購入する枚数を言ってください。以上です。」
朝の礼が終わるとこれを聞いた部員は
「また安川の暴走が始まった。」
と話していた。実際、今までこれに似たことは何度かあったがほとんどは実行されなかった。ただ、今回は今までにない程に張り切っていたので、今回は実行されると部員は確信した。
「弓道ティーシャツ買う?」
「俺は買おうと思うで。」
「俺も欲しいけど少し高くない?」
こう話しているのはレギュラーだ。今まで安川の暴走に散々振り回されていたので既に慣れっこである。ちなみに安川の暴走はほぼ毎回最後はよい方向に傾くし、説明を聞いた中では良さそうな物なので前向きだ。
一方サボり組は弓道ティーシャツに後ろ向きであった。
「あれ買う?」
「え~、やだ。だって高いし。」
「正直いらんくない?」
「うーん、俺買おうかな?」
中には前向きの人もいるがその人は比較的部活に参加する部員で、そうでない人は全員後ろ向きだ。部活が終わるとすぐにレギュラーが弓道ティーシャツのデザインの会議を始めた。
「シンプルやけどこれかっこいいし、これで良くない?」
「背中に大きく日本一って書こうや。」
「だったら世界一って書こうで。」
「むしろ宇宙一で良くね?」
そんな小学生のような会話をしつつ、デザインを考え、意見を言い合っていた。最終的には右腕の付け根の辺りに○○学校弓道部と印刷されていて、左胸の辺りは学校の校訓が書かれていデザインになった。それから5日後が注文の締め切りとなった。
「締め切りは終了して、注文する人の名前とサイズと返事をして、枚数を確認するので、名前を呼ばれは返事をして下さい。」
注文締め切りの日にそう言って安川が注文内容が合っているかを確認する。注文内容が間違っていないことを確認すると家に帰りすぐに注文をした。弓道ティーシャツが届いたのはその10日後だった。
「おおっ、かこっこいい!」
「結構いいやん。」
買った人にはおおむね好評だった。その日以降、弓道ティーシャツで練習をする人が増えた。
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