矢の手入れ

北村が部活後に安川に話しかけた。

「祐介~、矢の羽ってどうやったて手入れしたらいいん?」

「ん?ああ、じゃあ今日LINEで全員に動画送るよ。」

「了解、お願いね。」

「分かった。」


 ――――――――――――――――――

       『LINE』

弓道部


安川「北村のリクエストに応えて矢の手入れの仕方について説明します」


動画(ヤカンに入れた水をお湯にして出てきた蒸気を矢の羽に当ててその後羽をタオルでふく)


北村「ありがとうございます」

北村「矢の手入れのやり方がよく分からんかったけえ矢の羽を直接お湯につけとった わ。」

安川「おい北村、それは羽が傷むだけで」

平沼「北村、それはバカ」

国清「北村、それはアホ」

平沼「北村、お前はハゲ」

国清「北村、お前はデブ」

北村「おい、最後の2つは関係ないだろ!」

安川「あと俺がプロの人に質問したことがあるのでURL貼っておきます」

安川「URL――――」

北村「まじでありがとうございます」

平沼「さすがキャプテンや」

国清「どっかのハゲとは違う」

北村「だからそれ止めろ!」


 ――――――――――――――――――

次の日、北村は安川がLINEで説明した方法で矢を手入れして弓道場に持ってきた。


「昨日さっそく矢の手入れしたで。」

「お湯につけずにちゃんとやったか?」

「当たり前やん。」


北村の矢は心なしか羽が整っていた。その日北村はいつも以上に練習を張り切っていた。その日の練習が終わった後、レギュラーは次の日に試合があるのでいつもより早く帰った。すると弓道場に残るのはレギュラーを目指しているがレギュラーになれていない人か、弓道場で遊びたいサボり組である。


「ねえねえ、安川がやりよった矢の手入れやってみようや。」

「いいで~、やろう。」


そう行っているのはレギュラーを目指している森崎恭平と篠原涼だ。忘れている人もいるかもしれないが、篠原涼はカードゲームにでカードを持ってきていた遊びの達人だ。


「安川のポットってどこにあるか知らん?」

「確かあいつのロッカーにあるやろ。」

「あいつのロッカーどれか知らんのんやけど。」

「左から2番目の上から2番目。」

「これ?」

「それそれ。」


森崎は安川のロッカーからポットを取ると水を入れて沸かし始める。ちなみに安川のポットはカップラーメンを食べるために持ってきたのだが、いつの間にか部員が自由に使い始めたのだ。もちろん安川はこれを知っている。


「誰の矢でやる?」

「まず俺のでやろうや。」


しばらくするとポットから蒸気が出始めた。篠原は森崎の矢を持ってその矢を蒸気に当て始める。しかしポットはお湯が沸くとすぐに止まってしまった。


「ポットが止まったぞ!」

「これ手入れ終わるまでポットが止まるたびにまたボタン押さんといけんのん?」

「そうなんじゃね?」


こうして篠原が羽を蒸気で濡らし、ポットが止まるとそのたびに森崎が再びスイッチを入れるという作業が延々と終わるまで続いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る