打ち水

 朝早くに弓道場に来た国清はカバンを置き、一人弓道の準備をはじめた。弓道場の鍵を開け自分の弓を用意した後、今から自分が使う的を設置する。そして軽く準備体操をした後に弓を引くきはじめた。


「暑い~。」


国清は弓を引き終えるとすぐに弓道場にある2台の扇風機をつけた。強さを最大にしてしばらく涼んだ後、さっき放った矢を回収した。するとガラガラガラと扉の開く音がする。


「おはよう。」


 そうやって来たのは音丸だった。


「あ、おっとー。おはよう。」


音丸は弓道場に入るとすぐにスマホでゲームを始める。国清も弓を片づけてカバンからスマホを出すとそのゲームに参画した。そうやってたまに弓道をしながら遊んでいると人が集まり始めた。


「そろそろ準備するか。」 

「そうやね。」


そうやって2人は立ち上がり弓道場の掃除をしたり、草抜きをする。平沼がホースを持って打ち水を始めると、暑がっていた部員が頭に水をかけてもらいに平沼に近寄った。頭に水をかけた後一部の部員が上半身裸になり、今は使われていない椅子を3つ並べてそこに寝ろべった。


「平沼-、背中に水かけて-。」

「いいよー。」


そして平沼が背中に水をかけているとやがて平沼が暴走し始めた。ノズルをストレートに変えて人にうち始めたのだ。


「平沼が暴走したーー!」

「待って、こっち向けんで!」

「あーー!濡れたんやけど!」


やがてその水は原結菜はら ゆいなという女子に向かって発射された。


「ねえ、待って!うちこれしか服ないんやけど!」


そんなことお構いなしに平沼は水をかけまくる。原の服から水滴が落ちるようになると次の標的に固まってスマホをいじっているサボり組に向かった。彼らはスマホを持っているので直接水をかけることはしないが、まわりにある物に水をかけてその水しぶきをあてた。


「うっわ、冷た!」

「ちょっとまってや!」

「おい平沼!」


サボり組が平沼に文句を言いに行こうとすると安川の号令で体操が始まった。すると文句を言いに行こうとしていたサボり組も並んで体操を始めた。


「ねえ、うち服濡れたまま何やけど。」


その声に反応する人はいなかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る