登山(上)
夏休みのある日、午前の練習が終わった後、顧問の山中先生が
「今日は風が強いので練習しても意味がないので午後は山を登ります。」
と、突然言い始めた。部員は聞き間違えかと思い友達と確認しあったり、どこの山を登るのか考えたりと少し混乱していた。顧問の山中先生は弓道場を出てさっさと職員室に行ってしまったので確認のしようがなく、午後になれば分かると思い、いつも通りの昼休みを過ごした。
午後の練習が始まる1時になり、山中先生が弓道場に入って来ると主将の安川が先生に代表して質問した。
「先生、本当に山登るんですか?」
「おお、午前の練習の終わりにも言ったけど風が強くて練習にならんからのう。」
「何で風が強いと練習にならないんですか?」
「そりゃあ風が強いと矢が風に流れて矢の軌道が変わるけえよ。」
「ああ、なるそど。それで、登るってどこの山ですか?」
「学校の裏にあるあの山の山頂に行くよ。ええと、何って言う山だか忘れてしもうた。」
山中先生は弓道部員をぞろぞろと引き連れて坂道を登り始める。しばらくは道路があったがやがて完全な山道となった。すると弓道部一の野生児である
「元気じゃのう。」
と呟いた。
伊坂と平沼は遭難することなく山中先生の列と合流することが出来た。しばらくはきちんと山中先生の後ろをほとんどの人が歩いていた。しかし、山中先生は60歳で体力が少ないが部員の人達は体力のあり余る高校生。
道も一本道なので山中先生を抜かして山道をあ走りはじめた。
「はぁはぁ、ちょっと待って。」
「疲れたんなら後から来いいや。」
坂道はだんだんと急になっていき、体力の少ないものから前頭の走り組から脱落していった。しばらく進むと足下が落ち葉で見えなくなっている道があり、しかも葉が乾燥していてやたらとすべるのだ。そこで苦戦した後、少し休憩をした。
「やっほーーー。」
平沼がそう叫ぶと、
「やっほーーー。」
と後ろから三上の声が帰ってきた。
「いや、お前に言ってないからーーー!」
その後も進み続けると、また伊坂が暴走して道なき道を爆走したこと以外には特に問題もなく進むことができた。先生を置いて先に進んで行くと分かれ道があった。2グループに分かれて偵察に行くと片方は山頂に、もう片方は鉄塔にたどり着くことが分かった。
「先生は山頂って言ったよね?」
「たしかそうだった。」
「山頂に行く?」
「待っとった方がよくない?」
「山頂に行っとこうや。」
多数決をした結果、山頂に行って先生達を待つことにした。10分ほど待っても先生が来ないので分かれ道の付近で1人が偵察をすることになった。そして少したつと先生が来たが山頂側ではなく鉄塔側に行ってしまった。
偵察をしていた部員は急いで報告に行った。
「先生向こうに行ったで!」
「まじか!」
山頂にいた部員は急いで山中先生をおいかけた。先生が足音で追いかけて来た部員に気付く。
「あら、遅かったじゃ。」
「山頂の方に行っていました。」
「ハッハ、そうか。」
鉄塔のあるちょっとした広場につくとそこには地域を見渡せる場所があった。晴れているのもあり、とてもきれいだった。
「きれいじゃろ。ここを見せたくってのお。最後に来たのが4年前じゃけえ多分誰もここに来たことないじゃろう。」
先生の視線の先には部員がいた。
「あ、あそこにうちの学校がある。」
「俺ん家があった。」
「え、どれ?」
「帰りの方面の電車が今出て行った~。」
先生の持ってきたカメラで全員で記念写真を撮った。その後、そのカメラや自分のスマホで風景写真などを撮ったり、座って冷たい風で涼むなどをして各自でこの場を堪能した。
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