朝練
弓道部では朝の自主練のことを朝練と呼ぶ。もちろんずっと真面目に練習するわけではない。やり忘れていた宿題をする日もあれば弓道の専門店のカタログを見て欲しい物をメモしたりしてだらける日もある。レギュラーやレギュラーを目指す人は9割の人が来るが大体の人は練習時間の方が短い。
毎日鍵は7時に今の主将である安川祐介が開けている。学校は8時40分に始まるので、かなり来るのが早いがほとんどの時間を弓道の練習や研究に使っている。7時30分になると電車で学校に来る人が弓道場に着く。男子2人と女子1人が弓道場に入ってきたが男子の1人が自分のロッカーから寝袋を取り出す。さらに学校指定のかばんから充電器を取り出してコンセントに充電器を差し込み充電を始める。その後、寝袋を広げて潜り込み、寝袋の中で充電をしながらスマホでゲームを始める。ちなみにこれでもレギュラーである。
「お前は何しに朝弓道場に来とるん?」
安川が聞くが答えは分かりきっている。
「何って弓道に決まっとるじゃん。」
「じゃあやれや。」
「後でやる。」
これ以上は無駄だと思い安川はまた練習を再開する。その後に準備を終えた副主将の三上彩香は寝袋に向かって声をかける。
「おっとー、やらんのんなら教室行けば。」
おっとーとは寝袋の中でゲームをしている彼、音丸貫太のことである。しかし返事がないので顔を見てみると眠っていた。
「おっとー、起きろーーー!」
そう言いながら寝袋を揺さぶるとモゾモゾと動き起きあがる。
「おっとー、おはよう。」
「おはよう。」
そう返事をした後、まだ少し眠そうだが弓道の準備を始めた。弓を引く前には完全に起き上がったようで気怠そうな雰囲気はなくなっていた。すると自転車登校の弓道部員が1人来た。
「おはよう…この寝袋誰のかいや。」
「あ、すまん。これが終わったら片づけるけ待って。」
そう言いながら弓を引き始める。型に沿ってゆっくりと引き鋭く矢を放つ。するとトンッと的に当たった音が響く。
「よし!」
音丸は小さくガッツポーズをすると弓を壁に立てかけて寝袋を片づける。寝袋をロッカーに押し込め終えると別の弓道部員が来た。国清安成といい、弓道部員の『性格の悪いやつ』、『やばいやつ』ランキングで堂々の1位の人だ。といっても人をいじめたりすることはない。ただ単に人をいじることが大好きだったりするだけだ。いわゆるドSである。レギュラーではない人は大体8割くらいMなのでよくレギュラーではない人とつるんでいる。
「おっす。」
「あ、おはよー。あれ?いつもよりちょっと遅くない?」
「母さんが弁当作ってなかったけえコンビニに行って弁当買って来たけえね。」
「ふーん。」
「なんか今日少し人すくなくね?」
「うん。」
「まあいいや、少し引いたら教室行こ。」
その10分後に弓道場を片づけて教室に行ったが、いつもより弓を引けなかった国清は教室に着くまでの間少し不満そうだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます