第二十四短編 変身
空高く跳んで目の前にいる敵に向けて必殺技が決まった。いつもの戦いの終わり方だ。パンチやキックで敵を弱らせてから、最後の派手な必殺技でその敵の最後を飾る。一種の弔いってやつ。
僕は変身ヒーロー。この世界を侵略しようとしている悪の組織から、人知れずに人類を守っているんだ。
と、そんなことを思っているうちにまた新しい敵が出てきたみたいだ。
「変身っ!」
かっこいいポーズをとって、僕は変身する。アンダースーツが肌をしっかりと包み込んでから鎧が装着される。そうして敵の方へ殴り掛かりに行く。
パンチキックからの必殺技で華麗に敵をやっつける。決めポーズをして後ろで派手な爆発。いつも通りの流れだけれど、なんだか最近かなりやっている気がする。敵が異常に多く出てくるのだ。
でもまあ別に困らないな。疲れはするけれど、戦いには支障ないしね。それにたくさん変身できるしね。
そう、ここ最近僕は気が付いたんだ。変身が気持ちいいということに。あのアンダースーツが少しきつめにピチッと張り付く感触。そして鎧が装着されるときのずっしりとしたほどよい重さ。
最初の方からうすうす感じてはいたんだけれど、最近の連続変身で確信したんだ。変身はとにかく気持ちがいいって。
そこから僕のヒーロー観は変わった。世界を守るのはもちろん大事だけれど、自分のことも大切にしたい。
だから世界を救うために変身して戦うんじゃあなくて、変身をするために世界を守ることにしたんだ。
さすがに気持ちよくなりたいからと敵もいないのに変身するのはダメだと思う。僕のポリシー的な問題で。変身するのはあくまでも敵と戦うときだけだと決めているんだ。
おや、またもや敵が現れたみたいだ。
「変身っ!」
本日三回目の変身をして、敵に立ち向かう。
さあ、僕が気持ちよくなるついでに世界を守って行こう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます