第二十短編 犬がしない

 犬も歩けば棒に当たる。ふとそんなことわざを思い出した。我が家のイヌの散歩をしている最中だ。


 意味としては、でしゃばるとひどい目にあってしまうから気を付けろといった感じだ。


「わん!」


 イヌが吠えた。なんだと思い意識を現実に戻すと、棒があった。道のド真ん中にイイ感じの木の棒が突き刺さっていた。


 その棒に近づいてよく見たら、棒を中心に道にひびが入っている。


 どうすんだこれ。


 イヌが棒に近付いてクンクン匂いだけ嗅いで、そのままそれを無視して進んだ。伸びないリードなので引っ張られる形で僕も先に進む。


 イヌについて行くと突然「わん!」と吠えた。何事かとイヌが吠えてた方向を見ると、別のイヌがいた。どうやら威嚇をしているようだ。


 ううっと深くうなってじりじりと間合いを詰めていく。向こうが怯んだ瞬間、大きく吠える。


 そしたら向こうは飼い主と一緒にさっさと逃げ出してしまった。


「わぉぉぉん!」と朝なのに遠吠え。勝ちイヌの遠吠えだ。


 朝の散歩を無理やり終わらせて、家に帰ってきた。


 何か家がやかましい。リビングから怒鳴り声やらが聴こえてくることを考えると、どうやら両親がケンカをしているようだ。


 またか。


 うちの両親はよくケンカをする。夫婦喧嘩は犬も食わぬ。


 すぐに仲直りするし、ほうっておけばいいという意味だが、今回は字面だけの意味を適用したい。夫婦喧嘩は誰も得しないからさっさとやめてほしい。


 そんなことを思っているとイヌがリビングに向かっていった。僕もそのあとを追

う。


「わん!」


 一際大きくイヌが吠えた。


 そのあと、イヌは口を大きく開けまた吠え、なかった。吠えないで、ただ空を食

べているように口を開け閉めしている。


 気でも狂ってしまったか?


 すると、隣でイヌにも気付かずケンカをしていた両親が急にケンカを止めた。


 どうやら夫婦喧嘩は犬は食うようだ。

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