第七短編 魔性の碧
ピロピロピロ。テレパシー送信中。受信待ち。どなたでも参加できます。何名までもOK。ピロピロピロ。データを受信できませんでした。今日もテレパシーチャットの受信はゼロ。
未だ二度あのきれいな碧を見ることは叶わず、今日も私は暗闇を進む。どこにいるのかもわからず、たったの一度テレパシーで見ただけだがその美しさに私はたいそう惚れこんだ。
あの時一瞬しか見ることができず、しかしなお彼女の姿は脳裏に焼き付いている。私より小さな体躯に詰め込まれた澄んだ碧に、散りばめられた緑と茶の装飾が彼女の色をいっそう美しく見せる。
風のうわさで彼女はこの先を直進した所にいるらしく、今までと比べれば目と鼻の先だ。そして彼女の身体には今、大勢の虫けらが住み着いているらしい。奴らは知能が比較的高く、人と自称している。最も高等な生物という意味だそうだ。
そうならば奴らは人ではない。最も高等なのは私たちだからだ。つまり私たちこそが人なのだ。奴らにはゴミという名がふさわしい。しかし奴らは確かに知能は高い方だ。奴らの手によって彼女の身体は蝕まれ、寿命は大幅に縮んでいるのだから。
私が爆散してから長い時を旅したが、ようやくその終着点が見えてきた。遠目から見てもわかる。彼女のあの美しさが。暗闇に映る輝きを乱反射して碧くきらめくあの姿は、刻み込まれた記憶と全く同じものだった。
私が爆散してまでも彼女に会いに来たのはその姿をもう一度見るためである。しかし、旅の道中別の目的ができた。そこに留まる彼女に住み着くゴミを取り除くことだ。旅で摩耗し、彼女より小さくなってしまった私にできることといったらそれくらいだ。
さあ、もう目の前だ。できるだけゴミが多い所を狙って行こうか。
やあこんばんは。久しぶり。今の君はまた一段と美しいな。
そして、さようなら。
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