第八短編 予知道

 ぱちりと目が覚めた。窓の外は真っ暗で、音もなにも聞こえない。もう一度寝ようとしたがいくら横になっても眠る気配がない。仕方ないのでのそのそとベットから起き上がる。多分、今日はもう寝れないのだろう。家族が起きるまでまだ時間はあるようだし、何もすることが無いな。ふと散歩をしようと思い至った。僕は夜中に起きることはめったにないし、夜の道っていうのも興味がある。夜に散歩したことがないのだ。思い立ったが吉日。早速寝間着から着替えて、外へ出る準備を進める。


 準備を終え、玄関のドアを開ける。その先の世界には何も無かった。人も車もいなくて、街灯がぽつりと等間隔であるくらいだ。この何も無い空間で僕は一人でいる。僕は謎の高揚感に満たされた。

 気分が良くなった僕は車道の真ん中を歩いて進む。しかし楽しんだのは最初だけで、周りの景色は似たり寄ったりで直ぐにつまらなくなった。もう家に帰ろうかと考えていると、道の向こうに街灯ではない光を見つけた。興味がわいた僕はその光に向う。


 向かった所には色とりどりの花畑があった。花の品種もバラバラで何も考えずにきれいなものを集めたといった印象だ。その雑多な花畑を歩き、光がある方へと向かう。たどり着いた先には光ではなくきらきらと輝く山が現れた。近付いてよく見るとその山は宝石でできていた。海賊が狙うような金銀財宝だ。その輝きで目がくらみそうになる。その山に足をかけ登っていく。宝石の山は意外と高く。頂上から見る景色はきれいなのだろうと思った。


 しかし、そこにあったのは豊かな夜景でもなんでもなく、地獄だった。人々が蹂躙されていき、辺りに飛び散った血の池から香る鉄の匂い。それを嗅いだ僕は吐いた。宝石を汚し切るまで吐いた。


 はっと気づくと僕は寝床にいた。外はもう明るい。


 そして少し後、仕事を首になったと父に聞かされた。

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