8、4
ほとんど一本道だったので、俺たち迷わずに町を抜けることができた。一刻も早くライラに合流したい気持ちで早足になる。やがて、クロと別れた丘にたどり着いた。森の方角を確認し、迷わず下りていく。ユキが俺の肩に両足をのせて乗り出す。
「おい、そんなに急がなくても」
「早くライラに伝えないと。俺たち、すげー手がかりを見つけたかも」
ユキの嗅覚を信用するなら、あのソロモンと息子、マタルといったか、は人間とドラゴンの親子ということになる(親子と呼べるのかは不明だが)。ひょっとしたら、消えたドラゴンたちは、マタルのように人間と暮らしているのかもしれない。
そこまで考えて、嫌な想像が浮かぶ。それとも、まさか、ドラゴンをペットとして“飼う”のが流行ってる、とか? あんな大きくて力強く、知能もある生き物をそう簡単に従わせられるものだろうか。それに、ドラゴンとして飼うのなら、人の姿のままでは意味がない気もする。
そもそも、ソロモンは本当に人間なのか? 俺はこの世界の人間の言葉はさっぱりわからなかった。ソロモンも人間なら俺が彼と話せたことの説明がつかなくなる。まさか日本人、ってわけはないだろうし―――。
足だけをせわしなく動かしながら、俺の頭は疑問でいっぱいだった。あのマタルのあとをついていけば、すべて解決すると思っていたのに、かえってわからないことが増えてしまった。俺は興奮して、ユキをバッグから降ろすのも忘れて歩いた。
その時、うつむきがちだった俺の見ていた地面が陰った。かと思うと一瞬で晴れる。何かと思って空を仰ぐと、巨大な影が頭上で飛行していた。その影は俺に向かって急降下してきた。
「ライラ!」
なめらかな皮膚と大きな翼。着地する直前に、そのドラゴンは少女に姿を変えた。
「カイさん!!」
ライラが駆け寄ってくる。今にも泣きだしそうだ。
「よかった! どこも怪我はないですか?」
「うん。なんともないよ。俺もこいつも無事」
俺は肩越しに顔を出すユキを指していった。「おう。だから早く下ろしてくれ」
クロは頼んでくれた通りドラゴンの森へ行ってライラを探してきてくれたようだ。そのクロは今は俺の肩で羽を休めている。
「それで、あのボーズは何者だったんだよ」
「それが、けっこう色んなことがあっだんだよ」
「あのぼうず、って誰のことですか?」
ライラは首をかしげる。俺は、町で暮らすドラゴンのことを話した。
「そんなが同胞がいるとは知りませんでした」
ライラは初耳だったようで驚いている。
「ああ。だから、人間と一緒に暮らしてるドラゴンも多いのかも」
「たしかに、今まで人の町を探したことはありません。盲点でした」
クロが、俺とライラの間にくちばしを突っ込んできた。
「変わってんなそいつら。オレぁてっきり人間とドラゴンは仲が悪いものだとばっかり思ってたぜ」
クロの言葉に、俺もさっきの疑問を思い出した。
「ライラ、俺も聞いたばっかりなんだけど、この世界の人間とドラゴンってあまり仲良くないのか?」
俺の質問に、ライラは難しい表情をした。
「決して不仲なわけではありません。でも、依然と比べると交流が減っているのも事実です」
「この世界にも、ナビーはいるんだよな」
「はい。ただ、私たちと接触する必要性がなくなったので、自らがナビーであると名乗り出る人もいなくなったと聞きます」
「必要性って、どんな?」
ライラは一呼吸起きた。「少し長くなりますが、いいですか?」
俺がうなずくと、ライラはドラゴンと人との歴史について語り始めた。
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