4、2
突拍子もないお願いに、俺はただただ突っ立っているしかなかった。
「別の、世界…?」
訳が分からずオウム返しする。それは、どういうことだろう。
もしかして、ライラはどこかの国の貴族で、住んでる世界が違うという意味だろうか。まさか、お姫様とか?
いやいや、そもそもライラは人間ではないはずだ。じゃあなんだ? まさか本当に月から来たとか言わないだろうな。
俺はどう返すべきかわからず、ライラを凝視するしかなかった。困惑する俺に向かって、ライラは理解を求めるよう懸命に言葉を探している。
「こんなことを言われても困りますよね。でも、初めて話せたとき、カイさんだって思ったんです。きっと、言い伝えにあるのはカイさんのことで」
「待って。待ち。ごめん、えっと、ライラはどこから来たんだっけ?」
「あ、すみません。マスクト・レサです。この世界とは隣同士なので、カイさんも言い伝えは聞いたことがあるかと思います」
いや、全く存じ上げない。
いつもはクールなユキがぽかんとしているが、俺はそれ以上の間抜け面に違いない。俺はようよう考えて、何とかライラの言葉の意味を汲み取ろうと試みた。
「ますくと、れさ? っていうの? 俺は聞いたことないんだけど、日本から見たらどっちの方角にあるの?」
ライラは首を傾げた。
「ええと、この世界はニホンというのですか? 私たちはこの世界をネジャ・アルマ
と呼びならわしているのですが…」
ますます謎が深まるばかりである。悲しいかな、俺とライラは言葉こそ通じるが、意思疎通がまるでできていなかった。しかし、ライラがあまりにも必死なので、なんだか問いただすのがかわいそうである。
「ねじゃ、あるまって、聞いたことある?」
試しにユキに振ってみるが、ユキは黙って首を振った。俺とユキの半信半疑なやり取りを見て、ライラはすでに泣き出しそうだ。俺は焦った。
「大丈夫! 別にライラのこと疑ってるわけじゃないから! ただ、なんかその、俺たちの知らないことをたくさん知ってるみたいだから、もうちょっと噛み砕いて教えてくれると助かるなあ」
「そうそう。嬢ちゃん、まずはその言い伝えとやらを教えてくれないか?」
俺とユキの二人がかりでライラを落ち着かせると、ライラはなんとか気を取り直したようだ。俺は座卓について、ライラに座布団を勧めた。ライラもゆっくりと腰を下ろした。そして、とつとつと語り始めた。
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