4、述懐
4、1
母さんに頼まれた通り、客間に布団を運ぼうと居間を出ると、ライラが後ろをついてきた。
「いいよ、休んでて」
「いえ、そういうわけには」
とは言うものの、ライラは勝手がわからないのであたりをキョロキョロするしかない。どうやら、ライラには家にあるもののすべてが真新しいようで、興味深く観察していた。
寝室から布団を運び出して客間に向かうと、若い白猫、ユキが1匹でくつろいでいた。ユキにじっと見つめられながら、適当な場所に布団を敷いて寝床を作る。ライラが、生来の無口であるユキに話しかけた。
「あの、はじめまして。今日からお世話になるライラと申します」
ユキは、ゆったりと尻尾をくゆらせながら答えた。「ああ、よろしくな」
そして片目を開けて尋ねた。
「ときに嬢ちゃん、人間じゃねーな。どこから来たんだ?」
ユキが俺の疑問をズバリと代弁してくれた。そう、俺もそれが知りたい。俺はライラを振り返った。
「あの…それが、何と言ったらいいのか…」
非常に答えづらいらしく、口の中でもごもごと言い淀んでいる。
「おっと、言いづらいことなら無理に答えなくてもいいぜ」
「え、それはちょっと」
「おや、カイはこの嬢ちゃんが気に入ったのかな」
「いやそういうことじゃなくて」
俺とユキが言い合っていると、ライラが少しためらいがちに口を開いた。
「わたし、とても遠いところから来ました」
それは知ってる。
「えっと、具体的にはどこから来たの?」
言おうか言うまいか、ライラは非常に迷っているらしい。しばらく考え込んでいた
が、やがて決心したようにゆっくりと答えた。
「わたしは、ここではない、別の世界から来ました。ある伝承をたよってこの地へ人を探しに来たのです」
ライラの発した言葉の意味が、まったくわからなかった。別の世界? 伝承? 俺はユキと顔を見合わせたが、ユキも同じ気持ちらしい。しかし俺たちの戸惑いに気づかず、ライラはこう続けた。
「そして、たぶん、探している人物はカイさんのことなんです。カイさん、どうか、わたしたちの種族を助けてください」
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