Track 3

「おいおい、ギャスパ。あんまり怖がらせるもんじゃないぜ。ヒューマンのお兄さんごめんな。こいつちょっとお茶目なところがあって。俺はグザウィ。よろしくな。」


グザウィと名乗った方の左の首の人格はとても紳士的な感じだった。ギャスパのほうもへへへと悪戯な笑顔を浮かべている。どうやら2人?とも悪い人じゃなさそうだ。


「そんでそっちのエルフのお嬢ちゃんも参加希望かい?ヒューマンの兄ちゃんとエルフのお嬢ちゃんどっちからセレクトするんだ?」


フランと僕は顔を見つめ合い、お互い遠慮しあったようなかたちになっていた。


「どうしましょうか…。」


フランは緊張しているのか俯きながらうーんと顎に手を当てて考えている。


「僕はここにフラッときただけだし、今夜、ここでプレイすることを目的にきたフランが先にプレイしなよ。」


背中を押すような形で、僕はフランに先に出順を譲った。


「そ、そうですか。翔がそう言ってくださるなら。うん、私、がんばってきます!」


フランは決心したようだ。


「おっしゃ!」

「決まったようだね!じゃあ、リリィがこの曲で交代するから、エルフのお嬢ちゃんが2曲くらい回したら、ヒューマンの兄ちゃんに交代してくれな。」


ギャスパとグザウィが交互に元気よく声をかけた。

リリィと呼ばれたサキュバスの格好をした、セクシーなお姉さんがフランと僕に笑顔で手を振った。


がんばるぞい!のポーズをして、フランは遠慮がちにDJブースに登っていった。


フロアにはサキュバスのお姉さんがかけていたレゲトンとヒップホップ、そして、デスメタルのような、いかにも悪魔らしいが聴いたこともないような曲が流れていた。結構、変拍子が激しいけど、フロアのみんなよく踊れるなぁ。

フロアをボーッと眺めていると、ピクシーの女の子にウィンクされた。あんなに小さいのに動きがリアルだ。よくできたロボットだなぁ。


そんななかフランが機材の前に立つと、スクリーンのようなものが浮かび上がった。

フロアの観客は期待を込めてフランに視線を送っていた。

フランはまるで空に魔法陣を描くかのようになにかをしている。「これでいきます」といわんばかりに、フランは覚悟を決めたような顔をした。


サキュバスのお姉さんの曲が終わりそうなタイミングで、

フランが選んだトラックがフェードインしてきた。

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Club Fantasista 808 地獄の門を抜けてすぐそこ 高橋留美郎 @Rumilow_Takahashi

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