サーフィン
はるか彼方に、見えてきた大波。
マイケルは車から身を乗り出して叫んだ。
「来たぜ来たぜ、ビッグウェーブが!」
「危険だよ、やっぱり止めようよ」
すがりつく恋人のカレン。
それを振り払い、マイケルはボードを抱えて飛び降りる。
「何を言ってる! 俺のオヤジは……あの波に呑まれて、命を落とした。リベンジの時は今だ!」
「でも、私……」
「心配するな。俺は必ず生きて帰る。そうしたら、お前と……」
「マイケル!」
「行ってくるぜ!」
「マイケルー!」
かつて、「宇宙とは、何もない空間である」と考えられていたそうだ。
もちろんそんなことはない。
それならば、どうやって太陽の光は惑星まで届くというのか? 瞬間移動しているのか? そんなことはあるまい。
宇宙には、様々な光やガスなどの粒子、電磁波や放射線などの波動、重力などの物理的エネルギーが充満している。それらは混ざり合って絡み合い、影響し合って、複雑で大きな『波』をつくり出す。
その『波』に乗るのが、宇宙サーフィン。
銀河で大人気のスポーツである。
はるか数億光年の星々の“息づかい”を感じることができるロマンと、ときには誤って太陽に突っこんだりして命を落とすこともあるスリルが、人気の秘訣だ。
そして、この日。
とある赤色超巨星が、寿命で大爆発を起こした。
もうすぐ、その爆発によって拡散した粒子、電波、強烈なエネルギーが、『波』となってやってくる。これは、この銀河では500万年ぶりのことだ。
「来い、ビッグウェーブ!」
迫り来る大波。
遠ざかっていく、カレンの乗る恒星間移動車。
「勝負だ、オヤジ。俺はお前を超える」
決意も新たにマイケルは、7つの目に闘志を宿し、12本の触手でしっかりとボードをつかんだ。
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