知的生命体X
とある異星人が、地球にやってきた。
「部下よ、この星の生物について、調査結果を報告せよ」
「はい、わかりました。この地球という星には、知的生命体と呼べるような存在は、1種類であることがわかりました」
「ふむ」
「この知的生命体。仮にXと名付けますが、このXは、ありとあらゆる地域に分布しています。間違いなく、この星の支配者と言っていいでしょう」
「ほう。それでXの能力は」
「非常に頭が良く、難しい計算も短時間でこなします。ありとあらゆる分野の学問にも秀でており、膨大な資料から迅速に必要な情報を選ぶことができます。そして記憶力も高く、精度は正確無比。ここまで進化した知的生命体は、なかなか見つかりませんよ」
「それほどまでに……」
「さらに驚くべきなのは、情報伝達能力です。多数の複雑な方法で、広範囲で高度な意思疎通を成し遂げています」
「すごいな、このXは」
「ですが、妙な点もあります」
「なんだ?」
「このXが、ニンゲンという巨大で鈍重な生物を好んで調教し、使役していることです。
見て下さい、街を。
Xが、迷ったニンゲンに正しい道を教えています。
きわめて狭い範囲における空気の振動でしか意思伝達できないニンゲンを、Xが仲介してコミュニケーションをとらせています。
あのXは、今日のエサ場をニンゲンに指示しているようですね。
そのとなりでは、エサを食べ終わったニンゲンをあやして遊んであげているXもいます」
異星人にとって、地球の支配者は携帯電話に見えたようだ。
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