SFっぽいもの

野球ロボット

 あるところに野球が大好きなロボット博士がいた。

 そこで、どんなボールでもヒットを打てる、人型の野球ロボットをつくった。

「素晴らしいロボットができた。さっそくこれを売りに行こう」

 まずは一番強い東のプロ野球チームへ。

 ロボットは、東のチームのオーナーの前で、どんな投手からも次々とヒットを打った。右に左に自由自在。これは素晴らしい選手になる、とオーナーは喜んだ。

「素晴らしいロボットだ。よし、買おう」

 ロボットを買ったオーナーは、すぐに練習試合に出場させた。ロボットは見事なヒットを打ったが、そのあと動かない。バッターボックスに、じっと立ち尽くしたままだ。

 オーナーが博士に理由を尋ねると、博士は答えた。

「このロボットはヒットを打つロボットです、走ったり守ったりはやりません」

 それを聞いて怒ったオーナは、ロボットを捨ててしまった。

 そんなある日、一番弱い西のプロ野球チームの監督がやってきて、ロボットをもらえないかと言ってきた。東のオーナーは、こんなガラクタくれてやる、と言い捨てたので、西の監督はロボットを自分のチームに持って帰った。

 そして次のシーズン。

 西のチームは、東のチームを破って優勝した。

 勝因を聞かれた監督は、上機嫌で答えた。

「どんな球でもヒットを打つロボットのおかげですよ。

 投手はロボットなんかにヒットを打たれたんじゃ恥ずかしいってよく練習するようになったし、打者はロボットの打ち方を研究してよく打つようになった。ヒットを打たれても、守備で失点を抑える研究もした。

 あのロボットを使った練習はどれも効果的でした。

 まったく、素晴らしいロボットですよ」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る