68 僕の話を聞いて


 ― セルク ―



 マシュマロのような地面に、立っているようだった。

 足元が不安定極まりない場所で、僕は急に現れた男の子の声に耳を傾ける。

 急に現れたその子は、色々と言っていたけれど。


 正直、話が入ってこない。


 ただ彼は、こう言ったのだ。


「―― 君は賢者達から離れて、学園へ戻るべきだ」


 何故そんな事を言うのか、と、聞けなかった。

 ひどく優しげな笑顔で、何故そんなにもひどい事を言ってのけるのだろう。


 僕は、師匠達と離れたくない。ずっと、師匠が元の世界に帰ることでもない限り、ずっと一緒にいたいと思っていたのに。


 ……そうしなければならない。そう、心が叫んでいた。


 これ以上、師匠達と一緒にいてはいけない。何故か心と身体の悲鳴が合致して、喉まで出かかった反論が出て行かない。


 胸が、苦しくなった。






 ― アズサ ―



 優しく言っても意味が無い。

 そう考えて、僕はセルクへ、ストレートに言った。


 スイト達から離れ、学園に戻れ。命令形でこそ無いけれど、言うべき事を余す事無く告げる。傍から見ても異様な懐き具合だから、しばらく話が頭に入らなくなるだろうね。


 でも……きっと彼は、僕から何を言われずとも、ここから先へは行かなかっただろう。

 自覚症状が無くても、身体も心も悲鳴を上げているのだから。


 無理にでも付いていこうとすれば、トラウマで強制的に意識がシャットアウトするだろうし。その間に、勝手にスイト達がいなくなる方が辛いはず。

 僕がどストレートに告げたのは、間違いじゃない。


 ただ、正当でもないだろうけどね。


「アズサ様、女王陛下がお呼びになられております」

「うん。分かった。すぐ行くね」


 僕は、僕に用意された部屋にいた。


 クラクスだった身体は、とても軽くて使い心地がいい。元があれだと思うとぞっとするし、良い気分にはなれないけれど。


 でも、せっかくラセファンが作ってくれたのだ。ありがたく使う。

 それに、不老不死、みたいだし。


 僕が前に使っていた身体は、ぬいぐるみだった。あれはあれで便利だけど、デメリットが大きいのだ。


 第一に、記憶の混濁。

 ゴーレムは所謂奴隷的立場であり、ゴーレムという枠組みである以上、力が強い。だから人間がコントロールしやすいように、隷属魔法がかかっている。

 その作用で、記憶や意識が混濁してしまうのだ。


 偉人の知恵を偉人の魂ごと保存しても、肝心の記憶保持に問題があったのだ。


 まぁ、それはいい。今、僕は元に戻れているから。

 しかし、第二の問題は深刻だ。


 何せぬいぐるみなので、食事が出来ない。


 ……。


 食事が、出来ない!


 不老不死ってね、世の中の価値観がかなり変わるのですよ。生殖行為に意味を見出せない、あらゆる戦闘にスリルを感じない、お金が無くても別に生きていける。


 この世界の娯楽って、ハッキリ言って少ない。

 ボードゲーム、カードゲームとか、2人以上いないと、つまらないじゃない?


 じゃあ何を楽しみに生きようって、食事が主な要因になると思う。

 ぬいぐるみじゃない頃は、食事に栄養学を持ち込んだり、味のバランスを説いたりと色々してきたつもりだ。こちらの世界の方が、元いた世界より、食事方面では勝っていると思う。


 ぬいぐるみになってからの何千年かは、記憶が無いところも多いけど、すべからく食事が摂れなかったからね。ほら、ぬいぐるみだから。

 そのおかげか、ポーションが美味しく感じる。

 おかげで、セルク君特製ポーションが美味しかった。


 彼が作ったポーションは、普通に美味しいみたいだけどね。

 昔のポーションといったら……うぅ、思い出したら吐き気が。


 さて、話が大分逸れたけど、僕はとても豪華な部屋にいる。一応ご先祖様ポジションを獲得したからね。そもそも本当にご先祖だし、嘘は吐いていないからオッケーだよ、うん。


 ふかふかのベッドに、思いっきりダイブしてみたけど、本当に柔らかくて嬉しい。

 ずっとイスの上にいたから、感動したよ。


 この身体を得てから2時間。僕はその感動に浸っていたのだけれど、メイドさんが呼びに来たので、向かわなければならない。

 ご先祖様、として。




「で、これはどういう状況?」


 メイドさんに連れられて来た、数時間ぶりの王座の間。

 見知った顔ぶれと、見知らぬ顔がちらほら。スイト達は知っているけれど、ウサミミの子は見た事無い。誰だろうか。


 まぁ、スイトと何か揉めているみたいだし、彼の知り合いなのは間違いない。


 というか、ウサギかぁ。

 真っ白なウサギ。良いよね。


「ですから! 何故一度も連絡してくださらなかったのですか!」

「だから! すっかり忘れてたんだってば!」

「忘れないでくださいよ?!」

「そうですよ、スイト様! わたくし達の事を忘れるなど、酷いではありませんか!」


 真っ白な髪に、深い空色の瞳を持つ2人。片方は白い服を着た少女で、ウサミミは無い。


 というか、白い髪に白い服って、まさか……。


「フィオルちゃん、ごめんね。ドタバタしていて、うん、もう、ほんっとう、ドタバタしていて、念話をする余裕が無かったの」

「ご覧くださいスイト様! ハルカ様のこの言葉こそ、今の状況に相応しいと思いませんか?!」

「あー、うん、悪かった」

「誠意が全く感じられません!」


 ハルカから「フィオル」と呼ばれた少女は、頬を膨らませる。

 どうやら先程までの戦いで、完全に忘れ去られていた事にご立腹らしいね。彼女もスイトの仲間みたいだし、そりゃ、放っておかれるのは辛い。


 お付きの人が一緒でも、寂しい事に変わりは無いだろう。


「くぅ……」

「きゅぅう……」


 フィオルによって精神的に弱ってしまったスイトに、追い討ちを掛けるかの如く声が響く。フィオルとラビリスの少年の影から、わらわらと小さな子達が姿を現したのだ。


 空飛ぶイルカに、真っ白なキツネとタヌキ。その他諸々。


 あれは……! 召喚獣じゃないか。

 へぇ、もう契約は済ませていたのか。これはまた、かわいらしいものを召喚したねー。


「触らせて」

「ふぅお?! って、何だ、アズサか。驚かさないでくれ。まだ、立っているのがやっとの状態だから」


 割と本気で驚いたらしい。

 スイトは、急に背後へ現れた僕の声に、全身をビクつかせた。


「この子、名前は?」

「あ? あー、その子はドルチェ。ハルカさんの召喚獣」

「へぇ。あ、ふわふわ。かわいいね」


 なでなで。


「じゃ、この子は?」

「そいつはピットだな。ルディの……あー、あのウサギのの召喚獣」

「おぉ、木液のもふもふ……」


 なでなで、もふもふ。


「この子は? それと、この子とこの子。同じ子の召喚獣だよね?」

「よく分かるな……リオーネ、ピュルス、ノノンだ。ノノンは人見知りだから気をつけろ」

「了解」


 もふもふ、なでなで、ひらひら。


「おぉ、かっこいい。ドラゴンなんて、珍しい物を。タツキのだね」

「その通り。名前はラム。メスだ」

「わ、わ、鱗が意外とツルツル」


 つるつる、ぺたぺた、なでなで。


「で、この子がスイトの子だね。ふあふあじゃないか」

「ああ、うん。名前はノエルだけど……」

「わ、わ、ふあふあ、ふあ、ふあっ」


 もふもふ、なでなで、わしゃわしゃ、もふもふ……。

 自分でも分かるくらい目をキラキラと輝かせて、次々と召喚獣を撫で回す。


 特に、ノエル。このふあふあは素晴らしい。


 毛並みが綺麗で、ツルツルとしていながらもふわふわ。もう、手放したくないほどの撫で心地なのだ。


「くぅ~っ! くきゅぅ~!」


 最初はとても喜んでくれていたのだけど、途中から、鳴き声が悲しそうになってきた。でも、ごめんね。やめらんない。


「……ノエル!」

「くぅっ!」


 あ。


 持ち前のすべすべを活かして、僕の腕からするりと逃げてしまう。うぅ、もう少し触っていたかった。もう嫌われるのは確定していたから、せめてもう少し触っていたかった。

 ……また、隙を見て触りたいな。


「く、くぅん」

「今はダメ、だとさ」

「むぐ。むぅ」


 逃げたノエルは、スイトの腕に飛び乗っていた。人の頭2つ分の大きさであるノエルだけど、驚くほどに軽いのだ。全く負担になっていないはず。


 うーん、スイトが異様に軽いのも、この子の力が作用しているのかな。

 それなら、納得出来る。


 ふあふあで軽い感じが、良いね。うん。


 ……じー。


「くぅん!」

「せめて後で、だとさ」

「ふぬぬ……」


 むぅ、仕方無い。また後でちょっとだけ、触らせてもらおう。

 あれだけ嫌がっていたのに、また後で触らせてもらえるなんて。奇跡か。


「女王陛下のおなりにございます」


 おっと、あの時女王様に付いていた青年さんが、女王の訪れを知らせてくれる。


 と同時に、唯一の出入口から音がした。

 女王が、正装である白の衣服を纏ってやって来たのだ。


 僕達はほぼ全員、カーペットの敷かれた赤い道から退き、その横で跪く。

 ただ、それを指示されたのは僕、スイト、ハルカ、タツキ、そしてフィオルを除いた者。僕を含む5人は退きつつも、跪きはしなかった。


 ハルカや、ハルカにつられやすいタツキは、ぺこりとお辞儀はしていた。

 だけど僕、スイト、フィオルは、全く動じない。


 やがて王座に座った女王は、にっこりと微笑んだ。


「皆様、どうぞ顔をお上げください。……そして、このような場にお越しいただき誠に光栄でございます、魔王陛下」

「はい。ですが、このような時に来てしまって、迷惑ではなかったかしら?」

「とんでもございません! 最大限の感謝ともてなしをしたいと存じます」


 私服で白の衣服を纏って良いのは、この魔族領では1人しかいない。魔王だけだ。

 彼女は力を上手く抑えているし、全身真っ白なところで女王も彼女の正体に気付いたのかな。もしくは、誰かに言われたか。

 まぁ、彼女の美しい所作を見れば、バカでもない限り気付くだろうけど。


「まず、賢者様方にお礼と、褒美を用意してございます。どちらにお届けすればよろしいでしょうか?」

「この場では渡せない物なのですね」

「ええ。少し量があるのと、大きいためです」

「では、魔王城へ。よろしいですか、フィレウォッカ様」

「はい。賢者様への献上品として受け取ります。その旨を記載の上、お送りくださいませ」

「承知いたしました。では、そのように」


 女王が横に控えていた数人のメイドに視線を送り、2人ほどのメイドが下がった。彼女達が伝令係として後でしかるべき人物へと女王の意思を伝えるのだろうね。


 統率が取れている。見ていて気持ちがいいな。


「アズサ様」

「はい」


 ほぼ条件反射で応えると、女王はにっこりと微笑んだ。


「事情はお聞きいたしました。我等は、貴方の訪れをお喜び申し上げます」

「うん。でも、所詮は昔の人だから。あまり目上に見なくて良いよ」


 と言いつつ、敬語は使わない。使わないで、って僕を案内してくれたメイドさんから言付かったからね。所謂ご先祖様も、ちょっと面倒そうだけど、仕方無い。

 ぬいぐるみの時からタメ口だったから、正直やりやすい。


 僕、昔から誰に対してもタメ口だったからね。ふざけたり、どうしようもなく怒ったり、どうしてもそうしておけって言われない限りは敬語なんか使わなかった。


 そういえば、クラスメイトにも注意された事があったなー……。

 誰だっただろう。女子だった気がする。


「話は変わりますが、皆様はいつ、この国を発たれるのでしょうか?」


 女王はスイト達へと視線を定め、問う。その問に対し、フィオルがスイトへと視線を送った。

 そして、スイトが口を開く。


「準備は既に整っていますが、一晩休息をとった後、すぐにでも。よほどの事が無い限り、明朝には出発の予定となっております」

「そう、ですか。では、ささやかながら、宴は今宵としてもよろしいかしら」

「ありがとう存じます、女王陛下」


 恭しく一礼して、スイトはさりげなくフィオルの影へ行ってしまった。フィオルの背は小さいので、隠れる事はないけど。

 でも何故だろう、とても影が薄く見える。


 ……何で?

 その理由が理解できたのは、意外とすぐだった。


「……セルキエスト」

「!」


 女王は出入口の方へと目を向け、扉の近くにいるのであろう少年へと呼びかける。僅かな物音に、彼がそこにいるのだと確信した。


「皆様は、明日には発たれるそうですよ。しばらく、会えなくなります。今の内に別れの挨拶をしておきなさいね」

「……はい」


 ひょっこりと、豪華な彫刻が施された大きな扉の奥から、見慣れた髪の少年が現れる。母である女王に、とてもとてもよく似ている子、セルクだ。


 テレクがセルクの状態を告げたため、女王は予め、セルクを数日この城に留まらせる事を決めた。それから学園へ送る事は、既にセルクへ告げたようだ。


 彼の否応無しに、スイト達とは別れなければならなかった。

 とても懐いているスイトと離れるのは、精神的にかなりきついだろう。


 ああ、だからか。


 気まずいのだ。スイトも、彼が自分へ異様に執着している事を理解している。だからこそ、彼の前にはあまり出たくないのだ。

 だが、今のセルクはとても、悲しそうな顔をしている。


 見ているのが、辛い。それはスイトも同じだったらしい。彼はいつの間にか、セルクの前へと歩み出ていた。背を向けているため、その表情は分からない。


「セルク」

「……」


 優しい声音で、スイトはセルクへと語りかける。

 目線を合わせるように屈み、セルクの頭を撫でた。


「今生の別れじゃないし、早く済めば一週間後には会える。俺の勘は働かないし、自分で言うのも何だが、俺はトラブル体質みたいで、そう上手くは行かないかもしれないけど」

「……っ」

「でも、それでも、あまり時間をかけないようにがんばるから。な?」

「……っ!」


 スイトが、セルクを抱きしめる。顔を真っ赤にして、目からポロポロと涙を零すセルクが、スイトの後ろから見えた。


「良いか、俺は必ず帰ってくる。だから、セルクも短い間に、風邪なんかを引かないように気を付けろよ。これは約束だ」

「……う、あ、あぃ……はぃい……っ!」


 それから、セルクの涙がしばらく止まらなくなってしまった。ログやシェディなんかが風の噂を聞きつけたのか、ぞろぞろとやってくる。


 互いに軽く自己紹介を済ませた後、兄妹達は泣き疲れて眠ってしまったセルクを抱きかかえ、部屋を後にした。

 彼もとても疲れているから、今日中に目を覚ますのかは不明である。


 とりあえず、一生眠ったまま、なんていう状態は回避したようだけれど。スイトがこの国を出る前に、もう一度くらいは会わせたいね。


 さて、と。


 僕は、女王の計らいで関係者のみが残った王座の間を見渡した。

 スイトを始め、賢者一行や魔王など、実に重要な立場にある者がそろい踏みである。


 未だかつて、ここまで多くの異世界人が集まった事も。魔王が私服姿で外にいる事も。そして、かつての賢者と今代の賢者が邂逅した事も無かったはず。

 それぞれは昔あったかもしれなくとも、その全てが揃っている状況は無かっただろう。


 僕は静かに、口を開いた。

 彼等も、とても気になっているだろう。


「まずは、何から話そうか」


 頭の中で、物事を整理する。話そうと決めてからずっと、整理し続けているけれど、意外に話したい事が多かった。おかげで、話すべき事柄がごっちゃになっているのだ。


「そうだね、まず、僕の基本的な情報からかな」

「今とほぼ同じ姿だった時、こっちに来た、で合っているか?」

「うん。父さんも母さんもここまで綺麗な黒の髪と目じゃなかったけれど。父さん曰く、祖父の遺伝だろうって言われた。会った事、無いけど」


 写真で何回か見た事はあったかもしれない。けど、白髪混じりの祖父からは、綺麗な黒髪が連想しづらかった事だけは、とてもよく覚えている。


「僕はある日、突然この世界に飛ばされた。僕と、そう、あと2人が呼ばれた。僕は賢者だから、魔族領に来たけど、多くの場合人族が召喚を行うのに対し、その時は魔族側が召喚を行ったようだった」


 スイト達は当時高等部の校舎にいたメンバーが、全員連れてこられたと仮定していた。

 僕の場合は、真下に転移の魔法陣が現れて、そこから落ちるようにこちらへ来た。


 他の2人は、僕とは全く別の場所にいたのに、僕と同じような感じで召喚されたようだった。


「何でも、魔族領と人族領が百年単位で争っていて、それを止めてほしいらしかった。当然、当時の僕達はレベルが1だし、みんななら知っていると思うけれど、人族領には勇者が召喚されている。

 どちらも召喚に成功した上、人族領では儀式を行っていないのに勇者が来た事になる。当然、人族の指揮は上がって、争いはより苛烈になって行った」


 酷かった。当時の魔族領は、魔力濃度がそれほど高くはなく、必然的に人族も魔族領への進攻を躊躇わずにやっていた。

 加えて、人族は魔族に比べて繁殖能力が高い。僕達にしてみれば、同じ人種だし、そんな頻繁には生まれていないだろうとは感じたけれど。質より量で攻める人族に、数の少ない魔族は疲弊しきっていた。まるでゾンビアタックのように、次から次へとやってくるのだから。


 そういうわけで、僕達はどうにかしてくれと頼まれたわけだ。


「あれ?」

「どうした、ハルカさん」

「タツキ君、人族領と魔族領って、簡単に行き来できるの?」

「いや? たしか海は途中で割れて、底の見えない谷が広がっているから無理。その谷では一切魔法が使えなくなるから、空中を魔法で飛んでいくのも無理。中部トンネルとか橋は、谷の間が広すぎて、そもそもそんな大きな物が作れない。

 あるのは、地下に掘られたらしい地底都市を突っ切るか、偶然開く空間のゆがみに、一か八か飛び込んでみるか、くらいじゃねぇ?」


 タツキの言うとおり。

 魔族領と人族領は、5代目の頃に文明圏が分けられ、結界のおかげで干渉できない状態が続いていた。


 けどどこかの誰かさんがその結界を解いてしまったらしい。地下に開いた大穴を通じて、すぐ魔族と人族は戦争を再会した。

 お互い譲れない物があったのだろうけど、その争いが数万、数十万年も続いているなんてね。


 何度か停戦したらしいけど、未だいがみ合ってはいるので、意味が無いかな。


 もっとも、人間同士で争いあうのは、おそらくどこも同じだ。

 僕が住んでいた世界だって、国が違う、言葉が違う、宗教が違う。それだけで、同じような姿をした種族同士で争っているのだもの。

 魔族と人族は同じ人間だ。もしかすると、同族嫌悪もどこかにあるかもしれないね。


 おっと、話が逸れた。


「ともかく、5代目以降は人族、魔族間でしか戦争は起きていないな。他は知らないけど」


 うん。さすがに、ここじゃない世界の事は分からない。

 今度、別の世界を見る魔法でも開発しようかな。今なら出来る気がする。


 そう、僕が心の中で決意していると、凛とした声が響く。


「……5代目、ですか」


 そう、誰かが呟いた。

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