第293話 もう一人の人魚姫……(30)

 花は相変わらずの、生気があるのか、ないのか、分らないような。『ノボ~』とした様子で。笑みを、苦笑を漏らす訳でもなく告げ、説明をするのだ。


「へぇ~。そうなのかぁ、ニャン。それならば玉からも、キヨミさんにはおめでとうございます、ニャンと。祝い、祝辞だけ言っておくニャン……。う~ん、でも? キヨミさん? この家ダィンドー家は、貧乏伯爵家だから。御方様の側女、妾、身の周りを渾身的におこなっても碌な物はもらえないし。苦労するだけニャン。それでも、いいのか、ニャン? キヨミさんは?」と。


 玉の奴は苦笑を浮かべながら悪態。我が家の事を愚弄、嘲笑いしながらキョミへと告げてくる、ではない。ないのだ!


「えぇえええっ!」


「えっ、えぇえええっ!」


「ひ、姫さまぁあああっ! どう言うことなのですかぁあああっ! わ、私の! 私の新太さんに──! 側女、妾、下の世話をする。女性! 女性がいる。つけるとは、一体、一体どう言うことなのですかぁあああっ! 姫さまぁあああっ!」と。


 私がキヨミと花、玉との会話を聞き、驚愕! 絶叫を放てば。それに続くように、御方さまと、亜紀さんも絶叫──。


 特に亜紀さんの場合は、また姫さまへと、意味が分らない。理解ができなと嘆き始める始末なのだ。




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