第285話 もう一人の人魚姫……(22)

 キョミの奴が海訝しい表情で私へと尋ねてきたから。


「別に~。何でもありません。ありませんよ。(フフフ)」と、私は微笑み……。


 そう、キヨミへと苦笑を相変わらず浮かべてやりながら、何でもないのだと言葉を返したのだ。


「ふぅ~ん、そうですか。分りました。分りましたけれど……。ラフィーネ様良かったですね。本当におめでとう御座います……」と。


 私自身に何が『おめでたい』事がある。あるのか? 私自身にも解らない。理解ができない。


 私自身は、実の妹であるシルフィーヌが姉を差し置いてお嫁さん……。何処の馬とも骨とも知らない者を、勝手に城内へと連れ込んで、イチャイチャ、ラブラブしている事に対して腹立たせている状態で、イライラしている最中なのに。


『何が? おめでたですか!』、『いい加減にしなさいよ! キョミ!』、『私に本気に躯にされたいのですか? 貴女は?』と、問いかけたくて仕方がない衝動に駆られている私へと、今度は玉が。


「おめでとう、ニャン。ラフィーネさま。お幸せにニャン」と、言葉を漏らせば。


「ラフィーネさまもやっとお嫁にいかれるのですね。花も少しばかり寂しい。寂しいですね……」と、花が漏らせば。


「何故、花は? ラフィーネさま嫁にいかれたら寂しいニャン?」と。


 玉の奴が問いかける。


「ん? それは玉? ラフィーネさまのことを今後は行き遅れ。一生独身者などと、からかうことができないではないですか……。それに? 今後の余生を生きていくための仲間……。独身仲間がまた減る。数が少なくなるではないですか。玉……」と。


 やはり、玉も花も、上司の私が訳解らない。理解できない事。言葉を漏らしてくる。って……。


「えぇ、えええっ! 私が結婚──! 結婚、花嫁になるって、一体、一体どう言う。言う事なの? キヨミ? 玉、花──?」と。


 私は声を大にして叫び、だけではく。絶叫をあげると。




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