第282話 もう一人の人魚姫……(19)

 そう、今後は、我が家の御当主となられる旦那様から絶叫が放たれる。


 それも、先程から何度も出ている名前と声の主である『亜紀』と、言う名の女性が、我が家の旦那様の喉元へと噛みついた。食らいつてきたのだと旦那様絶叫を放ち。亜紀と言う名女性に、噛みつく行為をやめてくれ。欲しいと。絶叫を放ちながら嘆願をしているようなのだが。


 亜紀と言う名の女性は、我が家の御方様へと、安易に噛みつく。荒々しい所行をおこなえる程の間柄……。仲の良い。深い……。


 そう、家の姫様と同じで、御方様とは、夫婦的な立場の女性なのだろうか? と。私がこんな事を思案していると。


「ラフィーネ様? 姫様の旦那様……。御方様と、あの亜紀と言う名の女性は、どんな関係。間柄なのですか?」と。


 キョミが私へと尋ねてきたので。


「さぁ? 解らん。私では解らない……」と、私はキヨミへと言葉を返したのだ。



「はぁっ、またぁっ。また怒り始めたのですか? 亜紀はぁっ? そんなこと。そんな荒々しいことばかりを新太に。家のひとにしていたらぁっ。また新太がぁっ。死んでも知りませんよ。亜紀!」と。


 家の姫様が二人──。御方様と亜紀と言う名の女性がいるクローゼットの部屋へと向かいながら。こんな言葉を亜紀と言う名の女性へと告げるのだ。



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