第278話 もう一人の人魚姫……(15)
「うるさいですね! 花は!」と、姫様から不満の声、台詞が吐かれる。……だけではない。
「いいんですよ。花~。クローゼットの部屋が汚れていようが。捌けていようが。今日から家のひとがちゃんと丁寧に片づけをしてくれますから……」と、姫様は、このように、と、いうか、新たな主と、自分自身は大変に仲慎ましい関係なのだと告げたいように、遠回しに言ってくる。と、いうか、イチャつくように、今度はこんな台詞を漏らし始めた。
「あなたぁ?」
「ん? 何? シルフィーヌ?」
「後でその部屋の片づけをお願いしますね。あなたぁ! わかりましたかぁ?」
「えっ? 何で僕が。僕が、シルフィーヌが捌いた。荒らした。汚した部屋の片づけ、後始末をしないといけない訳?」
「はぁ~。あなたぁあああっ! 私(わたくし)の主人。夫なのですからぁ。妻が捌いた。汚した部屋……。特にその部屋はクローゼット。私(わたくし)の衣装、ドレス……。あなたの妻である私(わたくし)の下着が置いてある。片づけられている部屋なのですよぉ。そんな大事な……。あなたにとっても大事な物がある部屋に、赤の他人を入れてもいいのですかぁあああっ! あなたはぁあああっ?」
「えっ? いや、よくない。よくないとは思うけれど……。そんなに大きな声を出さないでよ。シルフィーヌ……。みんながびっくりするから……」と、御方様が諫めても。
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