第274話 もう一人の人魚姫……(11)

 でも我が家の姫様は、「へぇ~。そうだったのですか~。それは知りません。しりませんでしたね~」と。やはり、と、いうか? 家の姫様は全くと言って良い程気のしていない様子でいる。いるのだ。


 もうそれこそ? 親の心子知らずと言った感じ。様子なので。私は姫様に『何処にいかれていたのですか?』と、問いかけようとしたら。


「姫様、給金の方は、現物支給なら払って貰えるのですか?」と、メイド長のキヨミが、姫様へと先に訊ねたのだ。


「ええ、別に構いません。構いませんよ……。本当に長らく待たせましたね。本当にごめんなさい。キヨミに玉、花も……」と。


 キヨミの問いかけに対して姫様は、こんな感じで頭を下げ謝罪をしたのだが。一体家の、我が家の蔵、貯蔵庫に将や兵、使用人達へと払う。支払えるだけの物資、貯蓄がある。あるのだろうか? と、私は思いながら。


「姫様?」と、声をかけると同時に。


「亜紀~。亜紀はいますか~?」と、姫様が急に大きな声色、大にして、『亜紀』と、言う名の者を呼び始める。


 だから私は、それ以上は姫様に声をかけるような事はしないで、『亜紀』とは誰? と、思案を始めだすのだ。



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