第273話 もう一人の人魚姫……(10)
「はい~。わかりました~。貴女達~。貴女達は~。別に物資~。食べ物~。衣服などの現物支給でも構わないのですね~」と。私の耳──。
そう、海や川、池を泳ぐ魚達のような鰭、鰭の形をした耳に、懐かしい声色、というか? 私達近衛隊が血眼、懸命に探す。探索をしている姫様……。我が家、我が一族の長、主である伯爵令嬢の声色が聞こえてきたので。私は声の聞こえた方。方向へと、己の瞳を動かして凝視をすれば。
「ひ、姫さま、ご、御無事だったのですね……」と、安堵感。安堵した声音で、言葉を漏らしたのだ。
「ええ、私(わたくし)なら無事……と、いうか? 元気ですし……。みなは何か? 何かを探し。探索をしているようですが? 何か変わったこと……。大変なことでも逢ったのですか~? みな~?」と。この場にいる者達に問いかけてきた。
だから私は姫様に、「変わった事も何も……。姫様が部屋。この部屋と寝所にいないから。この場にいる者達、皆で、姫様を探す。探索をしていた。いたのですよ。皆で手分けをして……。なのに、姫様は……『何か起きた?』、『遭ったのか?』はないでしょう~。姫様~」と、不満を告げた。漏らしてやったのだ。
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