第266話 もう一人の人魚姫……(3)

 でも、キヨミの奴は、猜疑心のある目で上司である私の事を未だ『ジロリ』と睨む。睨みつけてくるのだ。自分自身の紅で濡れ輝、唇から『ニヨロ』、『チョロ』っと、舌を蛇のように出しながら。って、キヨミは蛇、蛇の妖怪、蛇女だった事をすっかり。すっかり忘れていた。いたのだよ。と、言ったところで私は、ある事を思い出す。思い出したのだ。


 良く考え、思案をしてみると。先程私に言葉かけてきた玉は猫科の妖怪【火車】と呼ばれる物の怪で、玉自身の容姿を見て確認をすれば分る通りで、まさに猫、猫耳と尻を持つ少女と言う感じなのだが。猫科の物の怪だけあってネズミ捕りは得意、得意なのだが。と、言って? 私がここで言った。告げた【ネズミ】と言うのは、賊や泥棒……。お城の内部へと侵入をした他国、領主達が放った間者を見つけ捉えるのが上手い。上手な物の怪の種族……。

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