第63話 幼少期の大変に不思議で恐ろしい経験……(14)

 う~ん、でもさ? それも束の間の安堵感だった。


 だって僕が、コウちゃんの手を『う~ん』と、力強く握り、『よいしょっと』と、引き上げた途端……。




 どうしても僕の視界と、言うか? 目線はね?



 僕が今、力強く引っ張り起こした──。コウちゃんの背。後ろへと自然に視線が移動をする。


 まあ、当たり前のことだけれどね。と、同時に?



 僕の両目、瞳に、何やら? この世の者とも思えない異形の物……。




 黒き闇色をした容姿の上に、髪は長く、乱れているだけではなくて。


 己の両手を前へと突き出し、掌は力無く、地面へと向けて垂れさせながら歩く姿……。




 そう、まるで? 怪奇シネマの貞○やゾンビ、キョンシー達のような恐ろしいいで立ちで。


「ううう、ううう」と、唸り声を漏らしながらこちらに……。




 そう、僕とコウちゃんの二人がいる方へと向かってくるのが。僕の両目に映る──。映ったのだ。


 だから僕は産まれて初めての怪奇現象──。幽霊、お化け、妖怪、物の怪と、世間で呼ばれる悪しき者を始めて凝視したのだ。


 と、なれば?



「で、でたぁあああ~。コッ、コウちゃんの言う通り~。本当にお化けがでたぁ、あああ~!」


 そして?



「いたぁ、あああ~!」と。


 僕は絶叫を、声を大にして叫んだ。そう叫んだのだ。



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