第62話 幼少期の大変に不思議で恐ろしい経験……(13)
「うん、大丈夫」
手を差し伸べた僕へとコウちゃんは、大丈夫だと言葉を返してきたのだ。
「そうか、よかった……」
僕もコウちゃんの言葉を聞き、『ホッ』と、安堵したよ。だから僕自身も安堵感から気が抜けて、その場にへたり込んでしまいそうになる衝動に駆られたのだよ。
でもさ、僕は、このまま安堵感から、コウちゃん共々、この場にへたり込んでしまう訳にはいかない。
だって、僕達二人のことを心配して慌てて反転──。この場にいる僕とコウちゃんの許へと駆けつけてくれている仲間達……少年探検隊達の足音の騒めきが段々と大きくなってきているだけではない……。
そう? もう一つの足音……。僕の目には見て確認することができなかった物……。多分、女性ではないか? と、思われる悪しき者……。
多分、地の底、冥界から這い上がってきた亡者……。お化け、幽霊と呼ばれる女性(もの)が、己の足を引きずるような足音を立てながら。
「ううう、待て、待って……。ううう……」
唸り声をあげ、漏らしながらこちらへと向かってくる。と、言うか? 直ぐ側──僕達二人に迫ってきているのが僕の耳に、だけではなく。痛みに耐え兼ねながら、己の身体を強引に起こそうとしているコウちゃんの耳にも聞こえているようだから。
僕達二人が繋ぎ握った──片腕にも力が入り。
「早くこの場から逃げよう、コウちゃん」
「うん、分ったよ。新ちゃん」と。
二人の声音にも力が入るのだよ。
と、なれば?
一目散にこの場から撤退──。
僕達二人の身を心配し、勇気を振り絞りながら、駆け足でこちらへと向かってくれている少年探検隊達と素早く合流を果たすしかない。
そう、ないのだよ。
だから僕は力強く、自身が握る、コウちゃんの手を強引に力強く、「う~ん」、「よい、しょっ、と……」と、独り言を漏らしながら引っ張り上げる。
そう、上げて、彼を起こしたのだった。
するとコウちゃんから「ありがとう……」と、お礼の言葉が、安堵感と共に、僕へと返ってきた。
だから『よかった、よかった』と思う、僕だった。
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