第28話 とうとう僕は、一人になった。(5)
……だけではないのだ。
「今から、夜の食事の準備をするから。新太さん、待っていてね……」と。
彼女は、入院中の父ではないが、心の病に侵されて、引き篭りと病院の通院を始めた僕の夕飯迄も用意をしてくれるのだよ。
亜紀ちゃん自身も仕事を終えたばかりで疲労……。疲れている筈なのに。
彼女は、僕の従妹、同じ会社に勤める上司と部下という立場の関係だけなのに。
亜紀ちゃんは、こんな感じで、毎日独り身の僕の世話……。介護を親身になってしてくれてね。
僕の心の病の改善に努めてくれるから本当にありがたい。
だから僕は亜紀ちゃんに対して感謝の気持ちで一杯……。
「新太さん~? 亜紀です~。玄関を開けてください~」と。
亜紀ちゃんの明るい声音が聞こえれば、部屋の隅で体操座りをしながら身を潜めている僕も、慌てふためきながら立ち上がり──。玄関まで移動──。
「亜紀ちゃん……」と、言葉を返しながら。玄関の鍵を開け、扉を開くのだ。
そして彼女の漏らす女神の微笑みを見て確認をすれば、僕は『ホッ』と、安堵する。
……だけではなく。
「いつもごめんね。亜紀ちゃん……」
従妹に対して、大変に申し訳なさそうな顔をしながらお礼を告げる毎日を続けている僕でね。本当に情けない男なのだ。
◇◇◇◇◇
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