第11話 時空の狭間
塔のふもとに到着した俺たち。頂上を眺めたが、分厚いグレーの幕が視界の先を覆い隠していた。
「ここが……悪魔の棲家?」
「たぶんな。だが――」
俺は開いている正面の扉に入らず、塔の周りをぐるっと歩いて回る。
「ここが怪しいな」
「だけど入り口の真反対ですよ?」
「神のいない世界にバベルの塔なんざ不要だろ?」
そう言って俺が目の前のレンガの壁に手を伸ばすと、固い感触はなく、そのまま突き抜けた。やはり幻影の壁だったか。
そのまま二人で塔の壁の中に入ると、中へ暗い廊下が続いていた。
「こんなところに通路があるなんて!」
「塔を上ったところで、意味はないだろうからな」
「どういうことですか?」
「ここは、お前のいた世界じゃないってことさ」
「え?」
「とりあえず歩きながら説明するぞ」
しばらく進むと、下に向かう階段が見えた。
周囲に気を配りながらゆっくりと下りる。
「俺の見立てではおそらく、この世界は次元の
「次元の……狭間?」
「以前神龍に教えてもらったことがあるんだ。DCは、さまざまな世界とつながってるって。ただ、どの世界ともダイレクトにつながっているわけではないらしい。俺たちの世界のインターネットが各国のDCを経由し、サーバーやルーターを介しているように、世界同士も間接的なつながりを持って管理されているそうだ」
「ごめんなさい、よくわかりません……」
「ああすまん。わかりやすく言うと、ここは中継地点なんだよ。で、今回は上り回線ではなく、下り回線の問題だから、俺たちが対応すべきなのはこの階段の下ってこと。とか言いながらも実際は俺もよくわかってないんだけどな」
「そうなん……ですか?」
「お前が元いた世界に、こんな塔はあったのか?」
「いえ、記憶にないです」
「じゃあ俺の勘にかけてみな。もしこの塔を上ったら、また俺の世界に飛ばされることになると思うぜ」
「あ! だからあの時!」
「そう。カマキリと戻ろうとしても元の世界に戻れなかっただろ? おそらくこの塔のテッペンからはじき返されたんだよ」
「ということは、どこが問題なんでしょうか?」
「おそらく、この先で何かトラブってるんじゃないかな?」
「トラブってる?」
「過去に俺たちの世界が危機に瀕したときもそうだった。回線が詰まったり切断されて大気の流れが悪くなったまま放置すると世界が壊れてしまうから、なんとかしなくちゃならない。俺たちの世界のあのDCからの自然の気が止められたら、お前の世界も立ち行かなくなるはずだ。だからそこを確認し、解決しないと――」
そこまで言ったところで、俺たちは階段を下りきった。
目の前の扉の向こうから強烈なプレッシャーを感じる。
この中から死の臭いが漏れてきているようだ。
「これはきついな……」
「コタロー、大丈夫ですか?」
思わず口をおさえた俺をミオが気遣う。
「なんというか、核心に近づいているのは間違いねーんだが、相当やっかいなものが待ち受けている気がするぜ。ただ、この臭いはどこかで――」
そのときだった。目の前の扉が音もなく開いたのだ。
そして、その先の闇の中で光る赤い目が俺を見据えて言った。
『久しぶりだな、小太郎』
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