第5話 善と悪のキャットファイト
「コタローの部屋って、よくわかんないものがいっぱいあるね~」
自宅につくと、いきなりミオに言われた。まあそうだろうな。仕事柄、実機をいじるのが日課で、古いサーバーやスイッチが山積みだしな。
ただ、それ以外の物はあまりない。一人暮らしの俺は、趣味もデリヘルくらいしかないし、ある意味汚しようがないんだよな。
……というか、結局こいつを連れて帰ってしまったわけだが、どうすんだよ俺。
時刻は午前1時を回ったところ。こんな時間に異世界魔導師コスプレ少女を連れてコンビニに行くわけにもいかないのでとりあえず部屋に戻ったが、素人の女の子にさすがに手は出せない……よな? それ以前の問題だよな? だいたいこんなロリっ娘なんて……
……ゴクリ
……いやいやいやいや
世の中の掟では『 YES !ロリータ NO! タッチ 』らしいしな……
……でも、本人が合意だったらどうするのだ?
……どうなんだろう
恋愛経験が致命的に足りていない俺は、正直どうすればよいのかわからない……
……とりあえず、頭を冷やさねば
年だけは確認しないと、法律上――
「そーいえばコタロー、なんでそんなにお金持ちなの? 私も買うつもり?」
「ななななにを言っておるのかね、きみは! 俺は金持ちじゃねーぞ? そんないい生活しているように見えるか?」
「だって2000ゴールドもポンって出すって、どう考えたってお金持ちじゃない?」
「あー、ゴールドはこの世界じゃ使えねーからな」
「そうなの?」
「仕事の都合でほぼ毎回最低限のモンスターは倒すわけだけど、そのせいで使い道のないゴールドが貯まってくんだよね。昔は武器とか買ってた時期もあったけど、今は特別使うこともないしな」
「どの程度貯まってるの?」
「ざっと500万ゴールドくらいか?」
そう俺が言った瞬間、ミオの目が大きく見開かれた。
「今、私に神の啓示が下った! コタローに一生ついていきなさいって!」
「なんでだよ!」
「だって500万ゴールドあったら、ロイヤルスイートで一生暮らせるんだよ!?」
「どんだけ打算的な啓示だ! っていうか俺はここで満足してるし。魔法のある世界は嫌なんだよ」
「え? なんで?」
「物理攻撃は怖くねーけど、魔法は避けられねーからな。痛い思いするの嫌なんだよ」
「大丈夫だよ! 私がついてるし!」
ミオが俺の腕を取り、ない胸を押し付けた時
――ピンポーン♪
呼び鈴が鳴った。
……が……誰だ?
うちを訪ねてくるやつなんて誰もいないはずだが? しかもこんな夜更け……
「こんばんわー! 服部くん、どーせまだご飯食べてないよね?」
ちょ! なんだってこんな時にエリちゃんが来るんだよ!
「きょ、今日は呼んでないよね?」
「だってこないだ合鍵くれたじゃーん」
え? 俺、そんなことしたっけ? なんて思い出す間もなく悪気なさそうな子悪魔フェイスで上がりこんでくるし!
「ん? コタロー、このおねーちゃん、スマホ画面の人?」
しまった! ミオは知ってるんだった!
「あれ? 服部くん、この子誰?」
「ああ、仕事で一晩預かることになっ――」
「神にコタローのフィアンセとして認められたミオだよ。おねーちゃんデリヘルの?」
「そうだけど、あなた耳が伸びてるけど、この世界の人じゃないわよね?」
「そう言うおねーちゃんこそ、エリというのは仮の名前ね? 本名は……
「ちょ、ちょっと! やめてよ! 死神の目で人の本名あばくのは!」
「ふっふっふ、あなたの過去を知られたくなければ、すぐに立ち去ることね! コタローを悪から守るのはミオの役目だもん」
ない胸を張り、勝ち誇ったかのように言うミオ。この際、善悪の定義は気にしたら負けなのだろう。
「んー、だけど、とりあえずご飯は作らせてもらおうかな?」
そう言ってエリちゃんは持ち込んだビニール袋を広げ、中に入っていた鍋の具材をキッチンに並べ始めた。
「ふふん、あなたの作った料理なんかでこの私が懐柔されるとでも? ……ん?! なっ、なによ! この芳醇な香りは! え? そ……そんなっ!」
食材を見て匂いをかいだだけで明らかに動揺し、驚愕するミオ。目の前に置かれているのは近所のスーパーで購入したもののようだが、どこに反応したのだろうか? それとも単に腹がへってるだけ?
「くっ……わかったわ。今日のところは私たちと一緒に食事をとることを許可してあげる! ……だけど私がこんな屈辱を……これもきっと、神が私に与えた試練なのね……」
……勝手に話を進められた俺は今晩、どうなってしまうのだろうか?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます