第3話 運命の出会い
ぷらぷらと近づいてくるその姿は、どう見てもさっき助けた小さなエルフっ娘だ。そして、その背後から3mほどの
この状態で気がつかないって、鈍いにもほどがあるだろ……
俺は溜め息をつきながら腰をあげ、地面を蹴って少女に襲い掛かろうとしていた植物を切り裂いた。そして他のモンスターがいないことを確認し、急いでエルフの娘の手を掴む。
「きゃっ!」
「しーっ! しずかに!」
俺はキャンプの結界の中に彼女を引っ張り込むと、顔をこちらに向けさせて黙らせた。そしてすぐに手を離し、外の様子をうかがう。
「あれ? さっきのお兄ちゃん! こんなところで何してるの?」
「静かにしてくれ! めんどいの来ちゃうから! っていうかお前、なんでここにいるんだよ。元の世界に帰ったんじゃないのか?」
「うん。帰ったんだけど、また戻されちゃったの」
「は?」
「カマキリさんと一緒に飛んだんだけど、その先でカマキリさん復活しちゃって、一緒にこっちに戻されちゃった」
「……よく無事だったね」
「で、あわてて逃げたら道に迷っちゃってお兄ちゃんにつかまっちゃった! キャー!」
真っ赤になった顔を自分でおさえるエルフ娘。
「こらこら、人聞きの悪いこと言うな!」
「これってあれじゃない? 運命ってやつ?」
「待て待て! っていうかお前、ここに何しに来てるの?」
「その質問、さっき私がしたよ?」
「ん? 俺は仕事で……あ! やべっ!」
モニターに向かって確認すると、リミット寸前だった。
「おお、あぶねー! 間に合った」
「で、何してるの?」
「だから仕事だって! 変なところさわるなよ?」
「これなに?」
「それ電源ケーブルだから。絶対抜く――」
スポッ!
「あばばばばば!!!」
「おー、やっと笑ってくれたねっ!」
「ちっがーう!! 変なところさわんなって言っただろーが!!」
「きみの変なところはさわってないけど?」
「誰がそんなことを言えと! ってか空気読めよ。今大変なんだからじっとしてろ!」
抜かれたケーブルがモニター用のもので助かったわ。心臓止まるかと思ったぜ。
つなぎ直して再起動の表示を確認しつつ、作業手順を頭の中で繰り返しながらラックの各部に目を走らせる。後ろの娘にかまうひまなどないのだ。
「ねー」
システムとしては追加サーバーを認識しているようだ。
「ねーねー」
ハードとしては問題なく組み込まれている。
「ねーってばー!」
システムとして、機能……
「これ、もう一回引っこ抜いていい?」
「あのね、あと少しだけ待ってもらえないかな?」
「あと少しってどれくらい?」
「5分」
「そんなに待てないよ~」
「じゃあ1分」
「わかった。いーち、にー」
「じゃかぁしいわ!! お前は黙って待てんのか!」
「そ、そんな怒らないでよ……」
涙目になった彼女を見て、俺も冷静さを取り戻した。
「あ、ああ、すまん。だが今集中して終わらせないと、お客さん待たせてるし」
「私だって待ってるもーん」
「じゃあ5分黙っててくれたら1000ゴールドやるから」
「え? そんなにくれるの? やったー! ミオだまってる~」
よし、これで作業に集中できる。あとはこのソフトを――
「1000ゴールドあったら~、極上肉まん食べて~、もちもち特製豚まん食べて~、ロイヤルスイートに泊まって~」
「きみは『黙る』という言葉の意味を知らんのかね?」
「えー、だって話しかけてないよ?」
「わかった。じゃあもう1000ゴールド追加するから、静かにしてくれないか?」
「ええっ? ほんと? やったー!! ミオいい子にしてる~」
どうせゴールドは腐るほどある。これで作業に集中できるなら安いも――
「あれ? でもお兄ちゃん、なんでそんなにお金持ってるの? ひょっとしてミオをダマした?」
「お前はしゃべらないと死ぬのか! ほらっ!」
振り向かずに1000ゴールド貨幣を2枚、投げてやった。ついでに黄色い耳栓を取り出し、装備する。
「わわっ! すごいっ! というか私、信じてたから! お兄ちゃんが私の事助けてくれた時から!」
「はいはい」
「私、お兄ちゃんの事、初めて会ったときからいいな~って思ってました」
「はいはい」
「すごく強いし、もくもくと働いてるところ、かっこいいし、顔も好みで~」
「はいはい」
「ほ、本当はだめなんだけど、お兄ちゃんだったらミオのこと、も、持ち帰ってくれてもいいよ!」
「はいはい」
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