第2話 データセンターでの任務
『小太郎、いつものことだがここから先は気をつけろ』
神龍の言葉が響く。この
耐震、防火防水、通信の安定、そして外部からの不法侵入対策など、DCとしての理想を突き詰めた結果、SUMIKAWAグループは自社のシステムを神龍に管理させる、という結論に至った。
神龍のゲートは、ニュートラルオーブを持つ俺にとっては顔パスなのだが、それを持つ者、つまりここに入ることのできる者は現時点では、俺しかいない。過去にパーティを組んで強行突破を試みようとする者もいたが、神龍の怒りに触れ、追い払われた。そういった意味ではセキュリティ的には優秀なのだろう。
台車を押して中に入ると薄暗い通路に死の臭いが漂う。通い慣れた道とはいえ、モンスターの気配を事前に察知し、回避しながら目的のラックまで辿り着くためには、相当な経験と天性の勘が必要となる。これはネットワーク管理者としての必須スキルでもあるが、目に見えないものを相手にするためには自分に対する自信と、固定概念の打破、という一見矛盾したメンタルを同居させなければならない。
なんとかモンスターに見つからないように進み、目的のラックに到着した俺は、キャンプを張って安全地帯を確保した。そして鍵でラックを開けると、手際よくレールを引き出し、サーバーとスイッチを設置していく。他のシステムの配線と干渉しないよう、無駄な時間を使わないように効率よくセッティングしていくものの、認証が通らない! マニュアル通りのはずなのだが……
ここで頼りになるのは自分の勘のみ。トラブルシューティングを繰り返しながら正解を導き出した俺は、ほっと一息ついた。あとはシステム全体を予定時間に再起動させるだけだ。
……その時だった。キャンプの外であわただしい気配を感じたのは。
再起動まであと5分。その間にモンスターとの接触トラブルは避けたい。
俺は息を殺してモンスターが過ぎ去るのを待つ。だが、相手はそれを許してはくれなかった。
「すみませーん、どなたかいませんかー?」
どこかで聞いたことのある声が響いたのだ。
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