どういうこと?
「どういうことなんですかね、これ」
「いやー、どういうことって言われてもねー……」
タハハと苦笑いしながら頬をかくヴォネガット教授。
調査からは一ヶ月が経過している。そろそろ何か結果がでたかナー?それとも何か手伝うべきかナー?と訪ねてみた次第。待っていたのはモニターとにらめっこしていたヴォネガット教授だった。
「成果はまぁ、はっきりと言ってしまえば芳しくはない。情報を確定させるには後一手が足りない状況だよ」
「なるほど?」
「まぁ、ローシャ教がああだったからなぁ……。仕方がないといえば仕方がないんだが。そういや何の用向きで来たんだい?」
「先日のあの"音"に関してなんですけど」
「あれは私にもわからないよ」
「そうですか……」
あっさり答えられてしまった。やっぱりそう簡単に分かるものでもないか……
「ただ―――」
彼女はそう言うとモニターから目を離してこちらを見つめてきた。
「あの"音"に関する被害が多く挙がっている場所は文化濃度が軒並み低い國ばかりなようだよ」
机の上のモニターをこちらに向けてくるヴォネガット教授。そのモニターにはLITERAL・PETRAにより色付けされた世界地図と、それにオーバーレイする形で今回の被害報告が挙がってきたという地域が色付けされていた。確かにこの地図を見他感じでは文化濃度の薄い場所ほど、被害件数が多くなっている。
「症状は頭痛や耳鳴りくらいか……」
「医学に関してはあまり詳しくはないが、まぁこの症状だけならあの爆音による被害だと理解することは容易だろう?けど、この偏り方はきな臭すぎる。原因はさっぱりわからないが、これには何らかの意図を感じるね」
「意図?」
「そう、何らかの考えがあってこうしている―――ような気がするって感じかな?まぁ、よくわからないから何とでも言える状況ではあるんだけども」
「何かしらの意図ですか……」
影響の偏りは明らかに何らかの要因があることを示している。リストアップされた地域をみても関連性があるようには思えない。症状が報告されているのは老若男女幅広い年代だ。地域の偏り方を動線で辿ってみても途中の國では全く報告の挙がっていない箇所もある。新たな感染症と考えるのも難しいか。ヴォネガット教授の推測どおり、何かしらの意図があるのだろうか?
「そういえば、言語剥離症罹患者からの報告はないんですか?」
「え?うーん、どうだろう。挙がってくるのは被害症状だけでその人の持病とか経歴までは詳しくはわからないなぁ」
「そうですか……」
「なんかあった?」
「いえ、その―――」
あの時に佳奈が漏らしていた声。何を言っているか分からなかったが、おそらくは墓語。あれ以来佳奈が再び似たような響きの言葉を話すことはなかった。本人にその時のことを聞いてみても覚えていないという。
「ふぅん、そんなことが……」
話を聞いた後コツン、コツンとコップを弾き続けていたヴォネガット教授だったが、何かを思いついたのかキーボードをカタカタと叩き始めた。
「この話、少し他の人に話してみたいんだがいいかな?」
「構いませんが……」
「私の知恵じゃどうあがいても足りない。後一手は専門家に任せるとしよう。結果はあとで報告するから」
「わかりました、お願いします」
これで何か手がかりをつかめればいいんだけど……
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